映画「007」シリーズの主人公”ジェームズ・ボンド”とはどんな人物なのか? イアン・フレミングが書いた原作小説の主人公”ジェイムズ・ボンド”を調べてみました。ジェームズ・ボンド007のプロフィールの紹介です。
ジェイムズ・ボンドの容姿
スメルシュの記録資料に添付されたボンドの写真(「007/ロシアから愛をこめて」)
「浅黒い顔でひげはなく、日焼けした右頬に3インチ(7~8センチ)ほどの傷跡が白くあらわれている。まっすぐな、かなり長い黒い眉の下に大きな鋭い目。髪は黒く、左側で分け、黒い前髪がばっさりと右の眉にかかるような無造作な櫛の入れ方だ。長めのまっすぐな鼻から短い上唇、その下には大きくて格好はいいが冷酷そうな口があった。顎もまっすぐ張っている。」
(第6章「死刑執行令状」)
ヴェスパー・リンド(「007/カジノ・ロワイヤル」)
「とてもすてきね。ちょっとホーギー・カーマイケルを思い出させるけど、たしかにどこか冷たくて無茶なところがあって・・・」
(第5章「本部からきた女」)
ガーラ・ブランド(「007/ムーンレイカー」)
「秘密情報部の連中によくあるような、うぬぼれ屋で若い男だ」
「たしかに彼は男っぷりがいい。ちょっとホーギー・カーマイケルに似ている。あの黒い髪を右眉の上に垂らしたところなんかそうだ。体格もよく似ている。ただ、口もとにちょっと意地悪そうなところがあるし、目が冷たかった」
(第14章「むずむずする指」)
ヴィヴィエンヌ(ヴィヴ)・ミシェル(「007/わたしを愛したスパイ」)
「あの人はひとりぼっちの人、ひとりで歩き、心を人には分けあたえない人だ」
(第12章「おやすみー運を天にまかせて!」)
イアン・フレミングが、ジェームズ・ボンドをイメージしていた
ミュージシャン・俳優のホーギー・カーマイケル(Hoagy Carmichael)
出典:https://jamesbondradio.com/reading-fleming-casino-royale-1953-benjamin-clow/hoagy-carmichael/
ジェイムズ・ボンドの経歴
スメルシュの記録資料(「007/ロシアから愛をこめて」)
スメルシュに保管されている記録資料より。
(第6章「死刑執行令状」)
写真は4枚(1946年、1950年、1951年(「007/カジノ・ロワイヤル」の頃)、1953年以降のもの(「007/ムーンレイカー」以降))
名前:ジェームズ・ボンド
身長:183cm
体重:76kg
痩せ型
目:青
髪:黒
右頬に縦、さらに左肩に傷跡(「007/死ぬのは奴らだ」でバラクーダ(オニカマス)に襲われる)
右手の甲に整形手術の跡あり(「007/カジノ・ロワイヤル」でボンドがスパイだということがすぐわかるようにスメルシュから派遣された男にMの文字(スメルシュ)を刻まれる)
(「007/死ぬのは奴らだ」では左手の小指をへし折られ、気を失う)
スポーツ万能、拳銃、剣闘、ナイフ投げの名手
(ボンドは徒手格闘のハンドブック「生きのびよ!」を書く予定。「007/ゴールドフィンガー」:第5章「夜の勤務」)
外国語はフランス語、ドイツ語
喫煙:金筋3本入りの特製巻き煙草を常用
悪癖:飲酒(ただし度は過ごさず) 女性(買収可能とは思われず)
25口径のベレッタ自動拳銃を左腋の下に革鞘に入れて携行している。
結論:危険なテロリストのプロフェッショナルであり、スパイである。
ジェームズ・ボンドはスパイ(情報収集の諜報活動)というより、カウンタースパイ(counterspy:敵のスパイ活動に対抗するスパイ)と指摘されている。
(「The British Spy Novel: Styles in Treachery」(1989):John Alfred Atkins)
1938年からイギリス海外秘密情報部に勤務し、機密ナンバーは007号。00(ダブルオー)の数字は、情報勤務中に殺人をしたこともあり、かつ殺人を行う特権を持つ情報部員であることをします。ほかに00ナンバーを持つ情報部員は2名と思われる。
「ニューヨークで日本の暗号の専門家を暗殺し、ストックホルムでもノルウェー人の逆スパイを殺したおかげでダブル零になれた」
(「007/カジノ・ロワイヤル」:第9章「ゲームはバカラ」)
「ジェイムズ・ボンドも、しばし実証して見せた殺し屋としてのすぐれた才能がなかったら、00の番号はもらえなかったろう」
(「007/黄金の銃を持つ男」:第3章「ピストル屋スカラマンガ」)
「ボンドは、社会を代表するMに選ばれた、公僕としての死刑執行人なのだ」
(短編「読後償却すべし」)
聖マイケル聖ジョージ勲章を1953年の在職中に授けられることは、この男の尺度となる。
死亡記事(「007は二度死ぬ」)
Mが「タイムズ」紙に掲載したジェイムズ・ボンドの死亡記事より。
(第21章「死亡記事」)
ジェームズ・ボンドの生年月日は?
イアン・フレミングの原作小説の中で、ジェームズ・ボンドは30代半ばから後半で、年齢を重ねることはありませんでした。
「007/ムーンレイカー」の記述では、秘密情報部00課の情報部員の定年である45歳まであと8年と書いているので、当時ボンドは37歳だったことになる。情報部員の定年後は自動的に本部の幕僚的な仕事にまわされる。
フレミングはボンドの生年月日を原作小説のなかで明かしていないが、ジョン・ピアースンの架空のボンド伝「ジェイムズ・ボンド伝(James Bond: The Authorized Biography of 007)」(ハヤカワ・ミステリ文庫)では1920年11月11日とされており、ボンド研究者のジョン・グリスウォルドの研究では1921年11月11日となっている。
グリスウォルドによると、イアン・フレミングの原作小説の舞台は1951年5月頃から1964年2月頃までで、その頃ボンドは42歳になっています。
ジェイムズ・ボンドの生い立ち
スコットランド人の父親、グレンコーのアンドリュー・ボンドとスイス人の母親、ヴォー州出身のモニク・ドラクロワの間に生まれる。
父親がヴィッカーズ兵器会社の海外派遣員で、ボンドは初等教育を海外で受ける。そのためにドイツ語、フランス語が得意。
11歳の時に、両親がシャモニーの上のルージュ峰の登山事故で死亡。
孤児となったボンドは叔母のミス・チャーミアン・ボンドの保護のもと、ケント州のカンタベリーに近いペット・ボトムという小さな村で少年時代を過ごす。
ペット・ボトムの「ダック・イン」
叔母のチャーミアン・ボンドの山荘の近くにあるパブ兼レストランの「ダック・イン」。イアン・フレミングはこの店の庭で執筆のための膨大なメモをとっており「007は二度死ぬ」が書かれた場所とも言われています。
出典:https://www.tripadvisor.co.uk/Restaurant_Review-g1840404-d2085515-Reviews-The_Duck_Inn-Pett_Bottom_Canterbury_Kent_England.html
美しいダック・インのすぐそばの山荘で学問もありよくできた婦人らしいその叔母からパブリック・スクールに入学するための教育を受けて、12歳で名門パブリック・スクールのイートン校に入学する(ボンドの出生と同時に父親のアンドリューが入学手続きをしていた)。だが、友人の家のメイドとまちがいをおかしたとかで退学勧告となってしまう。
16歳、初めて訪れたパリで初体験、財布もなくす。(短編「薔薇と拳銃」)
10代の頃にオーストリアのキッツビュールでスキー教師をしていた山案内人のハンネス・オーベルハウザーからスキーを習う。ボンドにとっては父親代わりの存在でもあった。(短編「オクトパシー」)
10代の頃に、ケント州サンドウィッチにあるロイヤル・セント・マークス・ゴルフクラブで何週間も毎日ぶっとおしに、日に2ラウンドずつやったことがある。ハンディキャップは9、フラット・スイング(横振り)の癖をなおせばプロ級になれると言われている。(「007/ゴールドフィンガー」:第7章「DB3に乗って」)
叔母の努力で、父親の母校であるスイスのフェッティスに転校することが出来た。ボンドは17歳で卒業するまでに学校代表としてライト級のボクシングの試合に二度出場している。また、イギリスのパブリック・スクールとしては最初の本格的な柔道部を創設している。
1941年、19歳で父親のヴィッカーズ社時代の同僚の援助によって後に国防省に昇格する政府機関の出先機関に入る。秘密の任務を果たすことから英国海軍特務大尉に任ぜられたが、大戦終戦時には中佐に昇進した。戦後も続けてこの省の仕事がしたいと当時の上司であったMに請願書を提出する。
1954年、聖ミカエル・聖ジョージ勲爵士授与されるが公表出来ず秘密とされている。
1962年、ジェイムズ・ボンドはマルク=アンジュ・ドラコのひとり娘テレサと結婚している。
イアン・フレミングの原作小説では、ボンドの友人で元同僚のある人物が、ボンドの活躍を一連の通俗小説として発表しているという形になっている。
ボンド家の紋章と家訓
ボンド家の紋章:「銀地に黒い山形と三個のベザント(金の玉)」
出典:https://literary007.com/2020/04/10/the-heraldry-of-bond-blofeld-and-fleming/
ボンド家の家憲:「この世も足らず」
ラテン語:「orbis non sufficit」
英語:「The World Is Not Enough」
(「女王陛下の007」:第6章「ボンド・ストリートのボンドか?」)
ジェイムズ・ボンドの仕事に対する信条(モットー)
デクスター「今までは、ミスター・ビッグに対するわれわれの方針は”われも生き、彼も生かす”というものでした」
ボンド「わたしの仕事では、こんな男と対決することになった時は、違うモットーを持っています。”死ぬのは奴らだ”というんです」
(「007/死ぬのは奴らだ」:第4章「大きな電話交換盤」)
「自分で仕事をしなければならないときは、ボンドはあらかじめ無限の努力を払って、少しでも運まかせになるような危険は残さないようにする」
(「007/ムーンレイカー」:第5章「ブレイズ・クラブの夜食」)
「とにかく、男にしろ女にしろ、どんな人物かは自分で判断することにしてるんでね。人の意見なんて何の役に立つ?」
(「007/サンダーボール作戦」:第15章「絵に描かれた英雄(ヒーロー)」)
「人間なんて、生まれた瞬間から死に向かって進んでいるのだ」
(「007/死ぬのは奴らだ」:第16章「ジャマイカの話」)
秘密情報部員の仕事の原則
秘密情報部員の第1の原則
「地の利を正しく把握し、出入りの手段を得て、外部との連絡を確保する」
(「007/黄金の銃を持つ男」:第7章「浮動産」)
秘密情報部員の確認のセリフ
「失礼ですが、マッチを拝借できませんか?」
「ライターでよければ」
「そのほうがありがたい」
「こわれるまではね」
ボンドは秘密情報部から来たと思われる男(ドノヴァン・グラント)に声をかけるが全く反応がなかった。
(「007/ロシアから愛をこめて」:第25章「ウィンザー結びのネクタイ」)
秘密情報部員の肩書
任務中には「ユニバーサル貿易」の社員の肩書を使ってきた。
「ユニバーサル貿易が秘密情報の隠れ蓑だということはもうバレている」
(「女王陛下の007」:第15章「危機せまる」)
秘密情報部はユニバーサル貿易を辞めて新たな隠れ蓑の会社「トランスワールド財団」を使用。
(「007/黄金の銃を持つ男」:第4章「星は占う」)
ジェイムズ・ボンドの愛用品
1.拳銃
ジェイムズ・ボンドは15年間、25口径のベレッタ(ボンドは握りの部分は骨組みだけ残し飾りをとり、上をテープで巻いて使用している)を愛用してきたが、長編第6作「007/ロシアから愛をこめて」でサイレンサーが引っかり危うく死にかける大失敗をする。
ベレッタ418
出典:http://commandobond.com/flemings-choice-the-beretta-418/
査問委員会の判断で武器を交換することになる。秘密情報部の兵器係ブースロイド少佐の推薦で、ワルサーPPK 32口径とスミス・アンド・ウェッソンのセンチニアル・エアウェイト(リボルバー38口径)をそれぞれ1挺ずつ支給される。
ワルサーPPK 32口径
出典:https://aminoapps.com/c/jamesbond-007/page/item/walther-ppk/z6r0_LPxfwI8D1JM2PvN3wv2B16GEWV5orw
2.車
ボンドは、過去にカーレースにも出場したこともあるほどのスピードカー好き。
車がただひとつの道楽(「007/カジノ・ロワイヤル」:第5章「本部からきた女」)
1台目 排気量4.5リットルのベントレー(軍艦色のグレイ):1933年に購入
(エムハースト・ヴィリヤーズの加速装置「スーパーチャージャー」を装備している通称「ブロワー・ベントレー」)
「007/ムーンレイカー」でヒューゴ・ドラックス卿(ベンツ300Sタイプ)とのカーチェイスで大破。
出典:https://www.motorbiscuit.com/the-original-bond-car-the-blower-bentley-is-back/
James Bond’s first car: Supercharged Birkin Blower Bentley
**
2台目 1952年製 ベントレー マークⅥ型 クーペ(軍艦色のグレイ)
「007/ムーンレイカー」で事件解決後に購入。原作小説では1953年製と記述。
出典:http://www.rathcoombe.net/007/Literary007.html
3台目 ベントレー・マークⅡコンチネンタル (軍艦色のグレイ)
Bentley R-Type Continental(「007/サンダーボール作戦」ではマークⅡと記述)
ボンドが事故車を1500ポンドで購入し、ロールス・ロイス社で修理。
圧縮比9・5のマークⅣエンジン搭載。自動開閉できるコンバーティブルの屋根を3000ポンドで装備させる。
出典:https://www.classicdriver.com/en/car/bentley/r-type-continental/1954/249289
ボンドはアメリカの車には興味を持っていない。
「たいていのアメリカの車にうんざりしていた。個性がないし、欧州車のように作った人間の職人気質のしみこんだようなところがない」
(「007/死ぬのは奴らだ」:第13章「ペリカンの死」)
「007/ゴールドフィンガー」では、ゴールドフィンガーの旧型シルバー・ゴーストを追跡するために秘密情報部から「アストンマーティンDB3」と「ジャガーMk2 3.4」を提案され、ボンドは「アストンマーティンDB3」を選択する。
3.腕時計
ロレックス防水時計
(「007/死ぬのは奴らだ」:第19章「影の谷」)
ローレックス・オイスター自動巻き腕時計
(「女王陛下の007」:第15章「危機せまる」)
4.たばこ
たばこを1日60~70本吸うヘビースモーカー。
ボンドは、ロンドンのグロスヴェナー通り83番地のモーランド社(イアン・フレミング自身が特製巻きたばこを注文していた)でバルカンとトルコの葉を混ぜた3本の金色の帯がデザインされた特製の巻きたばこを愛用していた。通常のたばこよりニコチンの含有量が多い。
ボンドは20歳前から喫煙の習慣があった。
(「007/サンダーボール作戦」:第7章「安全ベルトをおしめください」)
シガレットケースは50本入りの大きな砲金製のシガレットケース、ライターは黒ずんだ錆色のロンソンを使用。
(「007/ムーンレイカー」では黒い砲金製のシガレットケースと記述されている)
モーランド社製の特製巻きたばこ
出典:https://literary007.com/2018/09/10/ian-flemings-asprey-cigarette-holder/
ロンソンのオイルライター
出典:https://www.amazon.com/Ronson-Standard-R02-0028-Stylish-Lighter/dp/B01M9AHCVU
イアン・フレミング自身は、1930年代から愛用し1日最大で80本の特製の巻きたばこを吸っていた。
「モーランド社」
モーランド社は、イアン・フレミングの「ジェームズ・ボンド」シリーズの小説が売れることによってモーランド社の知名度が上がるとフレミングの許可を得て金色の帯をデザインした「ジェームズ・ボンド・スペシャル No.1」を製造、販売していました。
青箱1箱に50本入りと100本入りの2種類があり、また、たばこ1本ずつに「James Bond」の文字入りか文字を入れないものが製造されました。
出典:https://flemingsbond.com/morland-cigarettes/
「ジェームズ・ボンド・スペシャル No.1」の青箱の内蓋。
出典:https://flemingsbond.com/morland-cigarettes/
モーランド社は、イアン・フレミングの死後も「ジェームズ・ボンド・スペシャル No.1」を製造、販売していたが、1960年代後半から1970年代前半に閉店した。
5.酒
(1)シャンパン
ボンドが好んで飲む酒はシャンパン。お気に入りはテタンジェとヴーヴ・クリコのロゼ。
1.テタンジェ(taittinger)
映画第2作『007/ロシアより愛をこめて』に登場して有名になったテタンジェ。
出典:https://www.taittinger.com/ja/kontotoshiyanhaniyu
参考 シャンパーニュ界の伯爵、テタンジェとは?SAKECOME
2.ヴーヴ・クリコ(Veuve Clicquot)
イエロー・ラベルが印象的なヴーヴ・クリコ
出典:https://edgewoodtahoe.com/resort-activities/veuve-clicquot-champagne-tasting/
参考 偉大な未亡人が導いたヴーヴ・クリコOh my Wine!
(シャンパンは口当たりが良いがアルコール度数(11度~12.5度)は高いので飲み過ぎにはご注意を。ビールのアルコール度数は5度前後、日本酒のアルコール度数は15度前後。)
(2)ドライ・マティーニ
お気に入りのカクテルがドライ・マティーニ。
ボンド独自のレシピは、「007/カジノ・ロワイヤル」で紹介されています。
ドライ・マティーニのアルコール度数は25度以上。
ボンド特製のドライ・マーティニ
ヴェスパー・マティーニのレシピ
「ドライ・マーティニをひとつ。深めのシャンパン・グラスにいれたやつだ」
「ゴードンのジンを3、ウォッカを1、キナ・リレのベルモットを二分の一の割合で。
氷みたいに冷たくなるまでよくシェークして、それからレモンの皮をうすく大きく切ったやつをいれる」
(第7章「赤と黒」)
ボンドは自分の考案したカクテルにヴェスパーの名前をつける。
「ヴェスパー。ぴったりだ。わたしのカクテルが世界中で飲まれる、たそがれのすみれ色の時刻にぴったりだ。その名前、使わせてくれるね?」
(第8章「ピンクの光とシャンペン」)
世界一のスパイが愛したカクテル【ヴェスパー・マティーニ】
ボンド特製のドライ・マーティニは上司Mの評判はあまり良くない。
ボンド「ドライ・マーティニ。ウォッカを使って。レモンの皮を大きく切って入れる」
M「ひどいものを飲むんだなあ」
(「007/ムーンレイカー」:第7章「シャイナー」)
(3)ウォッカ
また、ウォッカを飲む時には、胡椒をひとつまみ入れて飲んでいる。
ウォッカのアルコール度数は40度前後。
ロシアの大使館付きになった時に、地元のロシア人から教わった飲み方が癖になっている。当時、ロシアでは闇酒が多く出回っていて飲む前に胡椒をひとつまみばらまいて表面に浮いている悪い油を底に沈ましてから飲んでいた。
(「007/ムーンレイカー」:第5章「ブレイズ・クラブの夜食」)
ボンドは任務で世界各国を回っているので訪れた国の酒を楽しんでいる。アメリカではバーボンやスコッチ、日本なら日本酒など。
嫌いな飲み物は「紅茶」。
Mの指示で夜勤をやることになり、最初の晩に売店の女の子が紅茶を持ってきてしまう。
「紅茶なんかいらん。嫌いなんだ。そんな泥水みたいなものが飲めるか。それにだいたい大英帝国の衰退のおもな理由のひとつは、紅茶なんか飲んでるからだぞ」
この発言から建物のなかでは”泥水みたいなもん”という言葉が広まった。
(「007/ゴールドフィンガー」:第5章「夜の勤務」)
「007/サンダーボール作戦」では、シュラブランズ周辺の紅茶専門店めぐり(自然療法の効果)をするようになる。
6.食事
「許してくれなきゃ困るが、わたしは飲んだり食ったりすることに、ばからしいくらい喜びを感じるんだ」
(「007/カジノ・ロワイヤル」:第8章「ピンクの光とシャンペン」)
「いくらむだ使いをしてもいいが、自分の食べたいものにむだ金は使うな」
(「007/ダイヤモンドは永遠に」:第9章「苦いシャンペン」)
ボンドは任務で海外をいるときは、一流ホテルなどで贅沢な食事を楽しんでいる。その反面、ロンドンにいる時にはいつも同じメニューの料理を食べている。
「イギリスでは、舌平目のグリル、目玉焼き、ポテトサラダを添えたコールドビーフばかり食べていた」
(「女王陛下の007」:第2章「グラン・トゥリズモ」)
「三度の食事のなかでもボンドはとりわけ朝食が好きだった。ロンドンにいるときは、彼の朝食はいつも同じものだった」
(「007/ロシアから愛をこめて」:第11章「安穏無事」)
ジェイムズ・ボンドの朝食
ブラックコーヒー大きなカップ2杯
(ニューオックスストリートのデ・ブリーの店から買う強いコーヒーをアメリカ製のケメックス社のコーヒーメーカーで煎れる)
3分30秒のゆで卵(固茹では嫌い)
(卵は、家政婦のメイが田舎にいる友人から仕入れたフレンチ・マラン鶏の茶色のまだらのある新鮮なもの)
ホールウィートパンの厚切りトースト2枚
黄色の色濃いジャージーバターひとかたまり
チップトリーの「リトル・スカーレット」のいちごジャム
フランククーパー製オックスフォードのマーマーレード
フォートナム&メイソンのノルウェー産ヒース蜂蜜
(任務で海外のホテルなどに泊まった場合の朝食はゆで卵ではなく、イアン・フレミングの好きなスクランブルエッグにベーコンを添えたものを食べている)
出典:https://literary007.com/2017/06/08/premium-bond-the-branding-in-literary-james-bond/
本部員食堂でのある日の昼食メニュー
舌平目のグリル
からしを添えたドレッシングの大盛りミックスド・サラダ
ブルーチーズにトースト
ボルドーの白い小瓶
ブラックコーヒー二杯
(「007/ムーンレイカー」:第3章「ベリー・ストリッパーなど」)
昼食は、友人で同僚のビル・タナーと一緒に外へ食べに行くこともある。
ボンドの好きな夕食(駅の食堂)
クリーム煮のココット鍋二人前
大きな舌平目
カマンベールチーズ
よく冷えたロゼ・ダンジュー1本
食後はヘネシーのスリー・スターとコーヒー
(「007/ゴールドフィンガー」:第12章「幽霊(ゴースト)を追う長旅」)
ジェイムズ・ボンドの私生活
1.ジェイムズ・ボンドと美女たち
ボンドの経験からすると、それほど車の運転の腕のいい女は、いつも美人で、それに面白い女だ。
(「女王陛下の007」:第2章「グラン・トゥリズモ」)
ボンドの女性の好みは映画スターなどのような世間に売れている女ではなく、
なんでもない女、自分で掘り出して、自分でものにできる女が好きだった。
(「女王陛下の007」:第2章「グラン・トゥリズモ」)
「結婚なんてものは、ふたりの人間がいっしょになってプラスになるものじゃない。どっちかが相手にマイナスをあたえるもんだよ」
(「007/ダイヤモンドは永遠に」:第22章「愛とベルネーズ・ソース」)
ボンドが結婚を考える女性の条件は?
「亭主をかわいがることができて、ベルネーズ・ソースの作り方もそのくらいうまい女だね」
(「007/ダイヤモンドは永遠に」:第22章「愛とベルネーズ・ソース」)
ボンドの好きな香水は?
ほのかなさっぱりした香水。
バルマンのヴァン・ヴェールか、キャロンのミュゲ。
(「007/ゴールドフィンガー」:第12章「幽霊(ゴースト)を追う長旅」)
ピエール・バルマンのヴァン・ヴェール
参考 Vent Vert 1945年 ヴァンヴェール バルマン パルファン サトリの香り紀行
キャロンのミュゲ・ド・ボヌール
参考 【キャロン】ミュゲ ド ボヌール(ミシェル・ モルセッティ)カイエ・デ・モード
1.ヴェスパー・リンド(「007/カジノ・ロワイヤル」)
美貌の英国情報部員。
「ボンドはこの女と一緒に仕事をするのかと思うと興奮してくる。同時に漠然と不安を覚えた。本能的にボンドは警戒した」
(第5章「本部からきた女」)
髪の毛は黒く、首筋のあたりでまっすぐ切りそろえている。その髪が顔の輪郭の背景となって、その下はくっきりとした美しい顎のライン。瞳は深みのあるブルー。
ボンドは結婚を決意してプロポーズをしようとした矢先に悲劇が待っていた。
2.ソリテール(「007/死ぬのは奴らだ」)
ボンドがこれまで会った女性の中でも一番美しいと思われるような娘。
髪は青みを帯びた黒髪、ふさふさと肩までたれている。青い目に顔色は青白い。
ミスター・ビッグがハイチのキャバレーで見つける。テレパシーが使える神秘的な女性。
3.ガーラ・ブランド(「007/ムーンレイカー」)
ヒューゴ・ドラックス卿の秘書。
実は、ヴァレンス副総監の指示でドラックスの研究所に潜入している警視庁特別部の婦人警官。
肉体的に素晴らく写真で見るより美人でボンドは驚く。控えめで有能な女性でありながら柔道の達人。
ドラックス卿が計画しているムーンレイカー号の本当の目的を探し当てる。
4.ティファニー・ケイス(「007/ダイヤモンドは永遠に」)
ダイヤモンド密輸団の美貌の連絡員。
サンフランシスコ生まれの27歳の女性。金髪の青い目。低くしゃがれた声。
一筋縄ではいかない女。大胆不敵といいたいような美しさを持つ女性。
不幸な男性経験があるが、任務完了後ボンドと数ヵ月幸せな日々を過ごす。
5.タチアナ・ロマノーヴァ(「007/ロシアから愛をこめて」)
ソ連国家保安省中央資料室イギリス課伍長。24歳。
グレタ・ガルボを若くしたようだと言われるほどの美女。
濃い茶色の絹を思わせる柔らかな髪。深みのある青く澄んだ目。
スメルシュが計画したボンド殺害計画でボンドを誘惑するために選ばれたのだが・・・。
6.ハニーチャイル(ハニー)・ライダー(「007/ドクター・ノオ」)
「きみみたいな美人に会ったのははじめてだよ」
(第11章「異郷のキビ畠のなかで」)
ボンドと出会ったことで事件に巻き込まれていくジャマイカの美女。
美しい目、口、身体をしているが15歳の時に暴行され、鼻の骨が潰れている。百科事典を読んで、珍しい貝は高く売れると知りノオ博士の島で貝を捕り生活している。
百科事典を読んで育ったので動植物についての知識が豊富であり、のちにその知識が彼女を救うことになる。
7.プッシー・ギャロア(「007/ゴールドフィンガー」)
ニューヨーク・ハーレムの女性ばかりのギャング団の女ボス。すみれ色の瞳。
10代の頃に、男性に暴行されて男性不信になった同性愛者。アクロバット一座を結成するが上手くいかず座員を泥棒に仕込んで女性ばかりのギャング・グループを結成。
ゴールドフィンガーの黄金強奪計画に参加するが、ボンドに出会ってボンドを助ける決意をする。
8.ドミネッタ(ドミノ)・ヴィタリ(「007/サンダーボール作戦」)
犯罪組織「スペクター」のエミリオ・ラルゴの愛人。
イタリア生まれの29歳。英国の王立演劇学校を卒業した女優。
両親は汽車の事故で死亡。生まれつき片足が1インチほど短い。
意地っ張りで個性的な女性。全体の印象、わがままで癇癪持ちで多感な女性。
兄のジュゼッペが殺されたことを知りボンドの「サンダーボール作戦」の捜査に協力するようになる。
9.ヴィヴィエンヌ(ヴィヴ)・ミシェル(「007/わたしを愛したスパイ」)
フランス系カナダ人。23歳。瞳は青。髪は天然パーマのこい茶色。
両親は彼女が8歳の頃に飛行機事故で死亡。叔母に育てられる。
カトリック系尼僧院で教育を受け、16歳でイギリスへ留学。
学生時代と就職先で失恋し帰国。その後、アメリカ横断の旅にでるがモーテルで二人組の殺し屋による事件に巻き込まれる。
たまたま、モーテルに立ち寄ったボンドによって助けられる。
10.テレサ(トレーシー)・ディ・ヴィチェンツォ(「女王陛下の007」)
トレーシーは、ヴェスパー・リンドと同じゲランのオードの香りがした。
(第18章「左へいけば地獄だぞ!」)
参考 オーデ ゲランGUERLAIN公式サイト
ボンドが唯一結婚した女性。
犯罪組織「ユニオン・コルス」の首領ドラコの娘。
ジュリオ・ディ・ヴィチェンツォ伯爵と結婚し、ひとり娘が生まれる。伯爵とは離婚し、子供は亡くなり、自暴自棄な生活を送っていた。
ボンドの人柄に惚れた父親ドラコが娘を助けてほしいとボンドに頼み込む。
やがて、ふたりは愛し合い結婚するのだが・・・。
11.キッシー鈴木(「007は二度死ぬ」)
海女。23歳。17歳の時に選ばれてハリウッド映画に出演。アメリカで生活した経験がある。
ハリウッドにいた頃、優しく接してくれたのはイギリス俳優のデヴィッド・ニーヴンだけだった。
帰国後、海女の生活に戻る。ボンドが任務のために日本人轟太郎として身を寄せた家の娘。
ボンドに恋をしてボンドの子を身ごもるのだが・・・。
12.メアリー・グッドナイト(「007/黄金の銃を持つ男」)
漆黒の髪に青い目、抜群のプロポーションで秘密情報部の男性陣を虜にしている元海軍婦人部隊員。
ボンドのもと秘書。前任者でボンドの秘書ローリア・ポンソンビーが結婚し秘密情報部を退職した後、ボンドの秘書になるが、ボンドが行方不明となり配置転換でジャマイカへ異動になる。
ボンド宛の緊急暗号電報を届けるためにボンドと再会し、ボンドとスカラマンガとの死闘に巻き込まれていく。
ボンドが愛したのはヴェスパー・リンドだけだった。
「ここでの冒険には、悲劇と胸に残る悼みがあって、だから彼は毎年ロワイヤルにきてカジノにゆき、それから小さな教会の庭にただ“ヴェスパー・リンドの墓”とだけ彫ってある小さなみかげ石の十字架をたずねるのであった」
(「女王陛下の007」:第2章「グラン・トゥリズモ」)
2.ジェイムズ・ボンドの住まい
原作小説にはボンドの住まいの正確な場所は記されていません。
キングス・ロードから少し入ったチェルシーにある19世紀はじめの建物を改造した家の1階のアパートとなっています。
「キングス・ロードに小さいながらも住み心地のいいアパート」
(「007/ムーンレイカー」:第1章「秘密の書類仕事」)
愛車はアパートの前にある小さな広場のすずかけの木の下に停めている。
ボンドは、スコットランド人の家政婦メイとふたりで暮らしています。メイの名前は、フレミングの親友であるアメリカ人アイヴァー・ブライスの家政婦メイ・マックスウェルから取ったものであると言われています。
英国人作家ウィリアム・ボイドがボンドの住まいを特定。
ウェリントンスクエア25番地
2013年に「007」シリーズの新作小説「Solo」を出版した英国人作家ウィリアム・ボイドは作品を執筆をするためにイアン・フレミングの原作小説全14作品を再読。原作小説のなかでは正確な住所が記されていないジェームズ・ボンドの自宅アパートを特定したと発表しました。
原作小説の「007/ムーンレイカー」や「007/サンダーボール作戦」にあるボンドの自宅の描写からウェリントンスクエアに注目。イアン・フレミングの交友関係から英国高級日曜紙「サンデー・タイムズ」時代の同僚がウェリントンスクエア25番地のアパートを所有していたことを突き止めました。
原作小説「007/ロシアから愛をこめて」のなかに「長い大きな窓のある居間」という描写があり、これが同僚が所有するアパートの間取りと一致しました。
ウェリントンスクエア25番地
出典:https://www.thetimes.co.uk/article/the-spy-who-lived-here-author-finds-james-bonds-bolt-hole-v7ct5r2kh
出典:https://www.johndwood.co.uk/properties/14808945/sales/CST140036#/
3.ジェイムズ・ボンドの日常
ボンドの日常は海外任務がない場合は主にデスクワーク。
上級公務員の勤務時間は10時ごろから6時まで各地の出先機関からの報告書など書類整理。
夜は親しい友人とカードか、クロックフォードの店にいったり、女房気取りの3人の女との熱のない愛のいとなみ。
週末はロンドン近郊のカントリークラブで高い賭け金のゴルフをプレイしている。
年に2,3回の外の任務(金はいくらでも使える)のあとで2週間の休暇(必要であれば病床を許される)が与えられる。
(「007/ムーンレイカー」:第1章「秘密の書類仕事」)
映画シリーズに登場するジェームズ・ボンドのように秘密兵器などを使わない原作小説では、頭脳・体力・根性(愛国心)で任務に当たるので事件が解決した後は疲労困憊や死にかけたりした状態なので原作小説の最後は病院に運び込まれることが多い。
大蔵省から00課は無用の長物と言われて、Mは上級部員にも日常勤務を交替でやらせることになり、ボンドも1週間ほど夜勤をやることになる。これが”泥水みたいなもん”発言の原因となる。
(「007/ゴールドフィンガー」:第5章「夜の勤務」)
4.ジェイムズ・ボンドの年収
ボンドの俸給は年1,500ポンド
税金のかからない金が年1,000ポンド
手取りで約2,000ポンド
2020年では5,4000ポンド(日本円で約830万円)に相当。
(「007/ムーンレイカー」:第1章「秘密の書類仕事」)
イアン・フレミングの原作小説についてはコチラ!
「007」シリーズ原作小説を読む順番は?【イアン・フレミングの原作小説一覧】
ジェームズ・ボンドの名前、コードネーム「007」の由来はコチラ!
ジェームズ・ボンド007の生みの親、英国人作家イアン・フレミングの生涯と創作の原点
記事作成日:2022/01/28
最終更新日:2022/04/03