「007」シリーズ原作小説を読む順番は?【イアン・フレミングの原作小説一覧】

「007」シリーズ原作小説を読む順番は?【イアン・フレミングの原作小説一覧】

 

「007」シリーズの原作者イアン・フレミングが執筆したジェームズ・ボンドの原作小説を読む順番や原作小説の一覧などの紹介しています。

 

「007」シリーズ原作小説を読む順番は?

 

長編12作、短編集2作品あるイアン・フレミングの原作小説を読む順番は、作品が発表された順番に読むのがおすすめです。

遂行した任務や事件、登場した人物に関しての後日談が作品のなかに結構登場するので、出版された順番に読み進める方が登場人物たちや事件のその後を知ることが出来て楽しめます。

特に、長編第6作「007/ドクター・ノオ」と長編第12作「007/黄金の銃を持つ男」はそれぞれ前作「007/ロシアから愛をこめて」、「007は二度死ぬ」の最後でジェームズ・ボンドは死んだのか?と生死不明で小説が終わり、次作では無事にMI6に復帰するネタバレになっているので作品の出版順に読むことをおすすめします。

また、007の映画シリーズを楽しむらイアン・フレミングの原作小説を読んでからの方が楽しめます。007の映画製作のきっかけになったのがプロデューサーのハリー・サルツマンが原作小説「007/ゴールドフィンガー」を読んでその面白さに感動して映画製作が始まったので原作小説を読んでおいた方が良いと思います。

007の映画を観ていて疑問に思ったところはだいたい原作小説に書いてあります。プロデューサーのバーバラ・ブロッコリも映画製作で行き詰まったら原作小説に立ち返れと父親のアルバート・R・ブロッコリに言われていたそうです。

映画のオープニングタイトルにも「Ian Fleming’s James Bond 007」と最初に出てくるので映画の基本は、イアン・フレミングが執筆したジェームズ・ボンドが主人公の原作小説になっています。

 

1.長編第1作「007/カジノ・ロワイヤル」(英国発売日:1953年4月13日)

2.長編第2作「007/死ぬのは奴らだ」(英国発売日:1954年4月5日)

3.長編第3作「007/ムーンレイカー」(英国発売日:1955年4月5日)

4.長編第4作「007/ダイヤモンドは永遠に」(英国発売日:1956年3月26日)

5.長編第5作「007/ロシアから愛をこめて」(英国発売日:1957年4月8日)

6.長編第6作「007/ドクター・ノオ」(英国発売日:1958年3月31日)

7.長編第7作「007/ゴールドフィンガー」(英国発売日:1959年3月23日)

8.短編集「007/薔薇と拳銃」(英国発売日:1960年4月11日)

9.長編第8作「007/サンダーボール作戦」(英国発売日:1961年3月27日)

10.長編第9作「007/わたしを愛したスパイ」(英国発売日:1962年4月16日)

11.長編第10作「女王陛下の007」(英国発売日:1963年4月1日)

12.長編第11作「007は二度死ぬ」(英国発売日:1964年3月26日)

13.長編第12作「007/黄金の銃を持つ男」(英国発売日:1965年4月1日)

14.短編集「007/オクトパシー」(英国発売日:1966年6月23日)

 

 

「007」シリーズ原作小説一覧

長編小説

1.長編第1作「007/カジノ・ロワイヤル」

(英国発売日:1953年4月13日)

組織の資金を増やす目的の投資に失敗したル・シッフル。そんな時、ロワイヤルのカジノでヨーロッパ最高額の賭けが行われることになる。英国秘密情報部員007ことジェームズ・ボンドは資金回収を目論むル・シッフルに高額カードゲームで勝ってソ連の秘密機関スメルシュの失墜を狙い美貌の会計士ヴェスパー・リンドとともにロワイヤル・レゾーのカジノへ向かう。英国秘密情報部員007ジェームズ・ボンド登場の長編第1作。

007原作小説:長編第1作「007/カジノ・ロワイヤル」の登場人物とあらすじは?007原作小説:長編第1作「007/カジノ・ロワイヤル」の登場人物とあらすじは?

 

2.長編第2作「007/死ぬのは奴らだ」

(英国発売日:1954年4月5日)

ジャマイカに眠る史上最高の財宝、”血まみれモーガン”の財宝。その財宝の金貨らしきものがアメリカ国内で見つかる。裏で動いているのはブードゥー教の教祖、サメディ大公の生まれ変わりとも噂される黒人ギャングのミスター・ビッグだった。調査のためにアメリカへ飛ぶことになった英国秘密情報部員ジェームズ・ボンド。CIA局員のフェリックス・ライターとともにミスター・ビッグの調査に乗り出す。ジャマイカの海で繰り広げられるミスター・ビッグとの死闘。秘密情報部員ジェームズ・ボンドの活躍を描く長編第2弾。

007原作小説:長編第2作「007/死ぬのは奴らだ」の登場人物、あらすじは?007原作小説:長編第2作「007/死ぬのは奴らだ」の登場人物、あらすじは?

 

3.長編第3作「007/ムーンレイカー」

(英国発売日:1955年4月5日)

貴重な鉱石の取引で億万長者となったヒューゴ・ドラックス卿。その資金を使い英国を守るためにと超大型原子力ロケット”ムーンレイカー号”を建造すると発表し、英国王室より勲章を授与されるなど一躍、英国国民の英雄となる。だが、ドラックス卿はMもクラブの会員となっている「ブレイズ・クラブ」でイカサマなカードゲームをしていると噂が流れていた。一方、ムーンレイカー号の研究施設近くの酒場で不可解な殺人事件が起きる。英国秘密情報部員ジェームズ・ボンドは”ムーンレイカー号”の研究施設へ調査のために潜入するのだが・・・。

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4.長編第4作「007/ダイヤモンドは永遠」

(英国発売日:1956年3月26日)

英国の大事な収入源となっているダイヤモンドの輸出。だが、そのダイヤモンドがアフリカからアメリカに密輸されているという。英国秘密情報部員ジェームズ・ボンドは、ダイヤモンドの密輸ルートを解明するためにダイヤモンドの密売人になりかわり、監視役の美女ティファニー・ケイスとともにアメリカへ向かう。

 

5.長編第5作「007/ロシアから愛をこめて」

(英国発売日:1957年4月8日)

英国秘密情報部員のジェームズ・ボンドによってことごとく計画を妨害されてきたソ連の秘密組織「スメルシュ」。「スメルシュ」の高官たちはボンド暗殺計画を画策する。そして、ただ殺すだけでなく「辱めて、殺すべし」と訂正された暗殺計画が実行される。一方、ボンドは平穏無事な日々を過ごしていた。Mからの任務は暗号解読機スペクターを持ってイギリスに亡命したいという美女タチアナ・ロマノーヴァをイスタンブールへ迎えに行くことだった。スメルシュの罠ではないかと疑いながらもボンドはイスタンブールへ飛ぶ。

 

6.長編第6作「007/ドクター・ノオ」

(英国発売日:1958年3月31日)

ジャマイカのキングストン。英国秘密情報部の支局からの定時報告が途切れた。その後、支局の主任と秘書が行方不明となる。Mから簡単な調査だと観光気分で引き受けたジェームズ・ボンドだったが、キングストンでボンドを待ち受けていたのはスメルシュの手下のノオ博士と地獄の回廊だった。

 

7.長編第7作「007/ゴールドフィンガー」

(英国発売日:1959年3月23日)

英国から黄金が流出しているらしいとイングランド銀行の総裁から調査を頼まれたMは、秘密情報部員ジェームズ・ボンドにゴールドフィンガーの調査を命じる。黄金に恋をした犯罪者ゴールドフィンガーに偶然にも三度遭遇したボンドは、ゴールドフィンガーの恐るべき犯罪計画を知る。

 

8.長編第8作「007/サンダーボール作戦」

(英国発売日:1961年3月27日)

核兵器2発を搭載した訓練中のNATOの戦闘機が行方不明となる。その後、スペクターと名乗る謎の組織から1億ポンドの金塊を要求する脅迫状が英国、アメリカへと届く。世界中の諜報機関に事件調査の「サンダーボール作戦」が発令される。秘密情報部員のジェームズ・ボンドはCIAの局員だったフェリックス・ライターとともにバハマのナッソーへ向かう。ボンドの宿敵スペクターとの闘いを描くスペクター3部作の第1弾。

 

9.長編第9作「007/わたしを愛したスパイ」

(英国発売日:1962年4月16日)

失恋を繰り返し恋に疲れたヴィヴィエンヌ(ヴィヴ)・ミッシェルは、英国から帰国しアメリカ横断の旅に出る。たまたま立ち寄ったモーテルで彼女は恐ろしい犯罪に巻き込まれる。偶然、彼女の危機を救ったのは英国秘密情報部員の男だった。主人公の一人称で語られる異色のジェームズ・ボンドの冒険譚。

 

10.長編第10作「女王陛下の007」

(英国発売日:1963年4月1日)

秘密情報部員ジェームズ・ボンドは、犯罪組織スペクターの首領ブロフェルド逮捕のために世界中を駆け巡っていた。秘密情報部の辞職を考えるボンドの前に謎の美女テレサ・ディ・ヴィチェンツォ伯爵夫人が現れる。彼女の父親である犯罪組織「ユニオン・コルス」の首領ドラコに彼女との結婚を頼まれる。ボンドは交換条件としてブロフェルドの居場所を聞き出す。ボンドは、ブロフェルド逮捕のためにアルプス山荘ピズ・グロリアへ向かう。突然の悲劇で終わる宿敵スペクターとの闘いを描くスペクター3部作の第2弾。

 

11.長編第11作「007は二度死ぬ」

(英国発売日:1964年3月26日)

トレーシーの死のショックから立ち直れずにいる秘密情報部員ジェームズ・ボンド。Mはボンドのために極東の地・日本へ暗号解読機マジック44を受け取りに行くことを命じる。日本の秘密情報部員、タイガー田中から暗号解読機との交換条件として不可解な事件の解決を依頼される。その事件の犯人と思われる人物の写真を見て愕然とするボンド。その人物とは憎きブロフェルドであった。事件解決後、ボンドは行方不明となりボンド死亡と発表される宿敵スペクターとの闘いを描くスペクター3部作の最終章。

 

12.長編第12作「007/黄金の銃を持つ男」

(英国発売日:1965年4月1日)

英国秘密情報部に復帰したジェームズ・ボンド。復帰したボンドに与えられたMからの指令は、各国の秘密情報部員を数多く殺害してきた”黄金の銃を持つ男”として恐れられる射撃の名手、スカラマンガの暗殺であった。最強の殺し屋との死闘を描く秘密情報部員ジェームズ・ボンドの最後の長編。

 

 

短編集

1.短編集「007/薔薇と拳銃」

(英国発売日:1960年4月11日)

「薔薇と拳銃」(From a View To A Kill)

英国通信隊の伝書使が殺され、極秘文書が盗まれる。付近を捜査した秘密情報部員ジェームズ・ボンドは、森のなかに怪しい薔薇の茂みを見つけるのだが・・・。

 

「読後償却すべし」(For Your Eyes Only)

Mが仲人を努めたジャマイカの荘園領主のハヴロック大佐夫妻が殺された。犯人はナチスの残党フォン・ハマーシュタインと判明。現在はカナダ国境に逃亡していると情報を得る。ボンドは暗殺すべしと主張し、カナダへ向かう。

 

「危険」(Risico)

秘密情報部員ジェームズ・ボンドは、イタリアの麻薬捜査でCIAの下で働くクリスタトスと接触する。クリスタトスの情報では、麻薬密輸団のボスは、エンリコ・コロンボだと突き止める。ボンドはコロンボの愛人リスル・バウムからコロンボについての情報を得ようと近づくのだが・・・。

 

「珍魚ヒルデンブランド」(The Hildebrand Rarity)

セーシェル共和国のマヘ島を任務で訪れていた秘密情報部員ジェームズ・ボンドは、クレスト財団のアメリカ人ミルトン・クレストから魚の標本集めを手伝ってほしいと頼まれる。探していた珍魚ヒルデンブランドを見つけたパーティーの後、クレストの無残な遺体が見つかる。豪華なヨットで起きた殺人事件の犯人を推理するボンドであったが・・・。

 

「ナッソーの夜」(Quantum of Solace)

「結婚するなら、キャビン・アテンダントがいいですよ」とのんきなことを言う秘密情報部員のジェームズ・ボンドに、総督はキャビン・アテンダントに恋をして結婚したカップルの話をはじめる。イアン・フレミングが敬愛する英国作家サマセット・モームへのオマージュ作品。

 

 

2.短編集「007/オクトパシー」

(英国発売日:1966年6月23日)

「オクトパシー」(Octopussy)

ジャマイカで裕福に暮らすデクスター・スマイス少佐は、秘密情報部員ジェームズ・ボンドの訪問を受ける。ボンドの話からスマイス少佐は戦争末期のある出来事を思い出す。ボンドの訪問はデクスター・スマイス少佐の死を意味していた。彼に残された時間は1週間だった。

 

「所有者はある女性」(Property of A Lady)

秘密情報部に所属する女性が、母親から相続することになったロシア人宝石師カール・ファベルジェのエメラルド球体がサザビーのオークションに出品されることになった。秘密情報部に所属する女性はソ連の二重スパイだった。オークション会場に彼女の指令係が来ると推理したボンドはサザビーのオークションに参加するのであった。

 

「ベルリン脱出」(The Living Daylights)

秘密情報部員の272号はソ連の極秘文書を大量に持ってベルリンを脱出しようとしていた。だが、彼が利用した連絡員はソ連の二重スパイだった。272号の暗殺を実行に移すソ連の狙撃手の暗号名は”引金”。ボンドはソ連の狙撃手暗殺のためにベルリンへ飛ぶ。ボンドが狙撃の瞬間、目にしたものとは・・・。

 

「007 in New York」(日本の翻訳版では未収録)

昔、秘密情報部員にいた女性職員が同棲している国連所属の恋人はソ連の二重スパイだった。CIAに知られたことを警告するためにMは秘密情報部員ジェームズ・ボンドをニューヨークへ派遣する。

 

 

 

ジェームズ・ボンドの年表

イリノイ大学の教授であるジョン・グリスウォルドは、イアン・フレミングの原作小説に描かれている出来事と本の中で言及されている実際の歴史的な出来事に基づいて、「ジェームズ・ボンドの人生のリアルな年表」を作成しています。

 

「Ian Fleming’s James Bond: Annotations and Chronologies for Ian Fleming’s Bond Stories」(2006)ジョン・グリスウォルド著

「007」シリーズ原作小説を読む順番は?【イアン・フレミングの原作小説一覧】

出典:https://www.amazon.co.jp/Ian-Flemings-James-Bond-Chronologies/dp/1425931006

ジョン・グリスウォルド教授の主人公ジェームズ・ボンドの年表について書かれた書籍

「007/ムーンレイカー」のブリッジゲームや「007/ゴールドフィンガー」のゴルフのゲームなどについての詳細な情報、各原作小説の地図も掲載されています。インディアンス大学の保管されているイアン・フレミングの注釈付き原稿と出版された原作小説との相違なども記載されています。

参考 Ian Fleming's James Bond: Annotations and Chronologies for Ian Fleming's Bond StoriesAmazon公式サイト

 

また、グリスウォルドは、イアン・フレミングは小説や物語の中で実際の歴史的な出来事を効果的に使い小説にリアリティを持たせている。だが、フレミングの原作小説のフィクションと実際の歴史的な出来事の日時は正確にはマッチしていないと述べている。

 

同じくボンド研究者の仲間であるテレビディレクターのヘンリー・チャンセラーもボンドの年表を作成しており、相違点はあるものの、グリスウォルドの作成したジェームズ・ボンドの年表とほぼ一致している。

チャンセラーも、イアン・フレミングの原作小説は出版順に設定されているはずなのに、「フレミングはいつも日付について正確に記述していない」と指摘している。

 

「James Bond: The Man and His World: The Official Companion to Ian Fleming’s Creatio」(2005)ヘンリー・チャンセラー著

「007」シリーズ原作小説を読む順番は?【イアン・フレミングの原作小説一覧】

出典:https://www.amazon.com/James-Bond-Official-Companion-Flemings/dp/0719568153

ヘンリー・チャンセラーの主人公ジェームズ・ボンドの年表について書かれた書籍。

この書籍のためにイアン・フレミングの研究ノート、日記、注釈付き原稿などをイアン・フレミングのアーカイブから公開しました。

参考 James Bond: The Man and His World: The Official Companion to Ian Fleming's CreationAmazon公式サイト

 

 

 

【ジェームズ・ボンドの年表】

1951年

1951年5月~7月「007/カジノ・ロワイヤル

 

1952年

1952年1月~2月「007/死ぬのは奴らだ

 

1953年

1953年5月「007/ムーンレイカー

1953年7月~8月「007/ダイヤモンドは永遠に

 

1954年

1954年6月~8月「007/ロシアから愛をこめて

 

1955年

 

1956年

1956年2月~3月「007/ドクター・ノオ

 

1957年

1957年4月~6月「007/ゴールドフィンガー

1957年10月「危険」(短編集「007/薔薇と拳銃」)

 

1958年

1958年2月「ナッソーの夜」(短編集「007/薔薇と拳銃」)

1958年4月「珍魚ヒルデンブランド」(短編集「007/薔薇と拳銃」)

1958年5月「薔薇と拳銃」(短編集「007/薔薇と拳銃」)

1958年9月~10月「読後償却すべし」(短編集「007/薔薇と拳銃」)

 

1959年

1959年5月~6月「007/サンダーボール作戦

 

1960年

1960年6月「オクトパシー」(短編集「007/オクトパシー」)

1960年9月~10月「ベルリン脱出」(短編集「007/オクトパシー」)

 

1961年

1961年6月「所有者はある女性」(短編集「007/オクトパシー」)

1961年9月「女王陛下の007」(第1章~第5章)

1961年9月下旬「007 in New York」(短編)

1961年10月「007/わたしを愛したスパイ」(第10章~第15章)

1961年11月~1962年1月1日「女王陛下の007」(第6章~第20章)

 

1962年

1962年8月~1963年4月「007は二度死ぬ

 

1963年

1963年11月~1964年2月「007/黄金の銃を持つ男

 

ジェームズ・ボンドのプロフィールはコチラ!

ジェイムズ・ボンドという名の男【ジェームズ・ボンド007のプロフィール】ジェイムズ・ボンドという名の男【ジェームズ・ボンド007のプロフィール】

 

 

ノンフィクション

1.「ダイヤモンド密輸作戦」

(英国発売日:1957年11月)

「ダイヤモンド密輸作戦」は、イアン・フレミングによるノンフィクション作品で、1957年に英国で、1958年に米国で出版されました。元MI5長官でダイヤモンド会社デビアスに勤務していたパーシー・シリトー卿が率いる国際ダイヤモンド保安機構(IDSO)のメンバーであるジョン・コラードへの2週間にわたるインタビューをもとに書かれている。

国際ダイヤモンド保安機構(IDSO)は、シリトーがアフリカからのダイヤモンドの密輸に対抗するために結成した組織で、南アフリカだけでも毎年1,000万ポンド(現在の価格で約2億5000万ポンド)相当の宝石が密輸されていると推定されていた。この書籍は、フレミングが1957年に『サンデー・タイムズ』紙に寄稿した記事を発展させたものである。

 

 

2.「007号/世界を行く」

(英国発売日:1963年11月)

「007号/世界を行く」は、ジェームズ・ボンドの作者であり、サンデー・タイムズ紙のジャーナリストでもあるイアン・フレミングの旅行記です。この本は1963年11月にイギリスのジョナサン・ケープ社から出版されました。

「007号/世界を行く」は当初、フレミングが『サンデー・タイムズ』紙に寄稿した一連の記事で、彼が行った2つの旅行に基づいていた。最初の旅行は1959年で世界一周の旅をし、2回目の旅行は1960年でヨーロッパを車で回った。

フレミングが取材した都市は、香港、マカオ、東京、ホノルル、ロサンゼルス、ラスベガス、シカゴ、ニューヨーク、ハンブルク、ベルリン、ウィーン、ジュネーブ、ナポリ、モンテカルロの14都市。

1回目の旅行は『サンデー・タイムズ』紙の特集編集者レナード・ラッセルに頼まれたものだったが、同紙の会長ロイ・トムソンがこのシリーズを気に入り、フレミングに2回目の旅行を依頼したものである。書籍化にあたっては、記事の一部を編集したほか、各都市の写真を掲載している。

各章の終わりには、フレミングが書いたホテル、レストラン、食事、ナイトライフに関する情報が掲載されている。

 

 

児童文学

「チキ・チキ・バン・バン 魔法の車」

(英国発売日:1964年10月22日)

「チキ・チキ・バン・バン 魔法の車」は、イアン・フレミングが息子のカスパーのために書いた児童文学で、ジョン・バーニンガムが挿絵を描いている。1964年10月22日にロンドンのジョナサン・ケープ社から全3巻で出版されました。

ジェームズ・ボンドの生みの親として知られるイアン・フレミングは、1920年代初頭にルイ・ズボロウスキー伯爵とエンジニアのクライヴ・ギャロップがハイアム・パークで製作し、レースに出場していたイギリスの有名なレーシングカーの非公式名称「チキ・バン・バン」と呼ばれるエアロエンジン搭載のレーシングカーから、この作品のインスピレーションを得ました。

フレミングは、ハイアム・パークの後のオーナーであるロバート・フレミング社の会長、ウォルター・ウィガムの客としてハイアム・パークのことを知っていました。この作品は、フレミングの死後、出版されました。

「チキ・チキ・バン・バン」は、1968年に映画「007」シリーズの共同プロデューサーであるアルバート・R・ブロッコリの製作、ロアルド・ダールとケン・ヒューズの脚本で映画化され、その後、ノベライズ小説も出版されました。また、この作品は、舞台ミュージカルとしても上演されました。

 

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イアン・フレミングの原作小説の特色と時代背景

イアン・フレミングの原作小説の分類

作家のレイモンド・ベンソンは、フレミングの著書は2つのスタイルの時代に分類されると指摘しています。

1953年から1960年の間に書かれた作品(「007/カジノ・ロワイヤル」~「007/薔薇と拳銃」)は、「雰囲気、キャラクター開発、プロットの進展」に重点を置く傾向があり、1961年から1966年の間に発表された作品(「007/サンダーボール作戦」~「007/オクトパシー」)は、より詳細でイメージを盛り込んだ作品になっていきました。

ベンソンは、フレミングが1961年に発表した「007/サンダーボール作戦」を書いたときには「マスター・ストーリーテラー(物語の達人)」になっていたと主張しています。

 

 

歴史学者のジェレミー・ブラックは、フレミングが創作した悪役を基準として「007」シリーズを分類しています。この分類は、学者仲間でもあるクリストフ・リンドナーによって支持されています。

「007/カジノ・ロワイヤル」から「007/薔薇と拳銃」までの初期の作品は、ソ連の秘密組織「スメルシュ」を敵とした「冷戦物語」として分類されています。

これらに続いて、3つの作品「007/サンダーボール作品」、「女王陛下の007」、「007は二度死ぬ」で、ボンドが新たに戦う相手となったのはエルンスト・スタヴロ・ブロフェルドが組織する犯罪組織「スペクター」との3部作として分類しています。

ブラックとリンドナーは、残りの作品(「007/わたしを愛したスパイ」、「007/黄金銃を持つ男」、「007/オクトパシー」)は「後期フレミング物語」として分類しています。

 

 

 

イアン・フレミングが影響を受けた作家と作品

イアン・フレミングは自分の作品について、「スリラーは文学ではないかもしれないが、『文学として読まれるように書かれたスリラー』と表現するのが一番しっくりくるものを書くことは可能だ」と述べています。

少年時代のフレミングは、H.C.マクニール中佐(通称「サッパー」)の「ブルドッグ・ドラモンド」の物語や、ジョン・バカンの「リチャード・ハネイ」の物語を夢中で読んでいました。

 

ロナルド・コールマン主演の映画『ブルドッグ・ドラモンド』(1929)

「007」シリーズ原作小説を読む順番は?【イアン・フレミングの原作小説一覧】

出典:https://www.amazon.co.uk/Bulldog-Drummond-Ronald-Colman/dp/B08BZ1CYQ7

MEMO

ヒュー・”ブルドッグ”・ドラモンドは、H.C.マクニール(1888年9月28日~1937年8月14日)が創作しペンネームの「サッパー」で出版された著作の主人公。

”ブルドッグ”・ドラモンドは、第一次世界大戦の退役軍人で平穏な日々に飽き足らず、刺激を求めて広告を出して冒険家になるという設定。

1920年から1937年までに原作小説は10作品出版され、24本の映画(1922年~1969年)が製作されました。

 

 

リチャード・ハネイ

アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『三十九夜』(1935)

「007」シリーズ原作小説を読む順番は?【イアン・フレミングの原作小説一覧】

出典:https://www.youtube.com/watch?v=LSkbDnEszlY

MEMO

リチャード・ハネイ(KCB, OBE, DSO)は、スコットランドの実業家、政治家、小説家ジョン・バカン(1875年8月26日~1940年2月11日)が生み出した架空の人物であり、1915年に発表されたバカンの同名小説をもとにした1935年のアルフレッド・ヒッチコック監督の映画『三十九夜』(およびそれ以降の映画化)で人気を博した。

リチャード・ハネイは、「39階段」、「緑のマント」、「三人の人質」などの全5作品に登場。

バカンは自伝『Memory Hold-the-Door』の中で、このキャラクターが第二次ボーア戦争のスパイであるエディンバラ出身のエドムンド・アイアンサイドを一部モデルにしていることを示唆している。

 

イアン・フレミングの才能は、これらの時代遅れの冒険を、戦後の英国の流行に合わせて再構築したことでした。ジェームズ・ボンドとはイアン・フレミングがジェット機の時代に創造したブルドッグ・ドラモンドだった。

 

イアン・フレミングが影響を受けた作家として、

レイモンド・チャンドラー

(「007/ゴールドフィンガー」では、ボンドがレイモンド・チャンドラー の新刊を買っている)

ジェームズ・ボンド007の生みの親、英国人作家イアン・フレミングの生涯と創作の原点

出典:https://www.writerswrite.co.za/raymond-chandlers-response-to-an-overzealous/

MEMO

レイモンド・ソーントン・チャンドラー(Raymond Thornton Chandler)

生年月日:1888年7月23日 – 1959年3月26日 70歳没

アメリカ合衆国生まれ

アメリカ・イギリスの小説家、脚本家である。

1932年、44歳のチャンドラーは、大恐慌の中で石油会社の重役としての仕事を失い、探偵小説家に転身した。1933年、最初の短編小説「脅迫者は撃たない」が人気パルプ雑誌「ブラック・マスク」に掲載された。長編第1作「大いなる眠り(The Big Sleep)」は1939年に出版された。短編小説に加えて、チャンドラーは生涯に7つの長編小説を出版した(死の間際に執筆中だった第8作目「プードル・スプリングス物語」は、第4章以降をハードボイルド作家のロバート・B・パーカーが執筆し完成させた)。長編第7作「プレイバック」を除くすべての作品が映画化されており、中には複数回映画化されたものもある。亡くなる前年には、アメリカ推理作家協会の会長に選出されている。

 

 

ダシール・ハメット

「007」シリーズ原作小説を読む順番は?【イアン・フレミングの原作小説一覧】

出典:https://www.pinterest.jp/pin/350858627200611717/

MEMO

サミュエル・ダシール・ハメット(Samuel Dashiell Hammett)

生年月日:1894年5月27日~1961年1月10日 66歳没

アメリカ合衆国メリーランド州セントメアリー郡

ハードボイルドな探偵小説や短編小説を執筆したアメリカの作家。

脚本家や政治活動家としても活躍。彼が生み出した不朽のキャラクターには、「サム・スペード」(「マルタの鷹」)、「ニック&ノラ・チャールズ」(「影なき男」)、「コンチネンタル・オプ」(「血の収穫」、「デイン家の呪い」)などがある。

ハメットは、史上最高のミステリー作家の一人として広く知られている。「ニューヨーク・タイムズ」紙の追悼記事では、「探偵小説の『ハードボイルド』派の学長」と評されている。

「タイム」誌は、1923年から2005年の間に出版された英語小説のベスト100にハメットの1929年の小説「血の収穫」を入れている。

1990年、米国犯罪作家協会は、ハメットの小説5作のうち3作を「The Top 100 Crime Novels of All Time」に選出した。その5年後、アメリカ推理作家協会が選ぶ「Top 100 Mystery Novels of All Time」に、ハメットの小説5作のうち4作が選出された。

 

 

グレアム・グリーン

「007」シリーズ原作小説を読む順番は?【イアン・フレミングの原作小説一覧】

出典:https://lithub.com/bombs-and-books-on-graham-greenes-life-during-world-war-ii/

MEMO

ヘンリー・グレアム・グリーン(Henry Graham Greene)OM CH

生年月日:1904年10月2日~1991年4月3日 86歳

20世紀を代表する英国の小説家、ジャーナリスト。

文学的評価と幅広い人気を兼ね備えたグレアム・グリーンは、生涯の早い時期に、カトリック系の本格的な小説と、スリラー(または彼が言うところの「娯楽」)の両方の主要な作家としての評判を得ました。1966年と1967年には、ノーベル文学賞の候補にもなっています。25編以上の小説を含む67年間の執筆活動を通じて、現代世界の相反する道徳的・政治的問題を探求しました。1968年にはシェイクスピア賞、1981年にはエルサレム賞を受賞しています。

1926年、後に妻となるヴィヴィアン・デイレル=ブラウニングと出会った後、カトリックに改宗しました。後年、自らを「カトリック不可知論者」と呼んでいる。1991年、白血病のため86歳で死去。コルソー墓地に埋葬された。

1951年に発表された「情事の終り」で世界的な名声を得ました。スリラー小説はオーソン・ウェルズの主演で映画化もされた「第三の男」、「ヒューマン・ファクター」が有名。

 

 

エリック・アンブラー

(「007/黄金の銃を持つ男」では、ボンドがエリック・アンブラーの小説「ディミトリオスの棺」を読んでいる)

「007」シリーズ原作小説を読む順番は?【イアン・フレミングの原作小説一覧】

出典:https://alchetron.com/Eric-Ambler

MEMO

エリック・クリフォード・アンブラー(Eric Clifford Ambler)OBE

生年月日:1909年6月28日~1998年10月22日 89歳

イギリスのスリラー小説、特にスパイ小説の作家であり、このジャンルに新しいリアリズムを導入した。サマセット・モームやグレアム・グリーンと並ぶ現代的なスパイ小説家の先駆者として広く知られている。脚本家としても活躍したが、チャールズ・ロダとの共著ではエリオット・リードというペンネームを使っていた。

1936年に発表した処女作「暗い国境」は文学性豊かなスパイ小説として注目される。「あるスパイの墓碑銘」(1938)、「ディミトリオスの棺」(1939)で確固たる地位を築く。

 

の名前を挙げています。

 

ニュー・ステイツマン誌のウィリアム・クックは、イアン・フレミングの小説を「英文学においては重要だが、あまり評価されていない伝統の集大成」と考えています。

 

記号学者、哲学者のウンベルト・エーコは、ミッキー・スピレーンにも大きな影響を受けたと語っています。

「007」シリーズ原作小説を読む順番は?【イアン・フレミングの原作小説一覧】

出典:https://www.scencyclopedia.org/sce/entries/spillane-frank-morrison/

MEMO

フランク・モリソン・スピレーン(Frank Morrison Spillane)

生年月日:1918年3月9日~2006年7月17日 88歳

アメリカの犯罪小説家

ペンネームの「ミッキー・スピレーン」として知られているが、彼の作品には代表的な私立探偵のキャラクターであるマイク・ハマーがしばしば登場します。彼の作品の発行部数は世界中で2億2500万部以上とも言われています。俳優としても活躍し、自身でハマーを演じたこともあります。

17歳で小説を書き始める。第二次大戦後、麻薬捜査官としても活躍。

1947年の私立探偵マイク・ハマーの第1作「裁くのは俺だ」でデビュー、当時としては爆発的大ヒット作となる。ハードボイルド・タッチの作風で悪人を裁くためなら暴力もいとわない内容やセックス描写などのため一部の批評家からは批判を浴びることになった。

 

 

 

(1)時代背景:第二次世界大戦の影響

 

原作者イアン・フレミングの生涯についてはコチラ!

ジェームズ・ボンド007の生みの親、英国人作家イアン・フレミングの生涯と創作の原点ジェームズ・ボンド007の生みの親、英国人作家イアン・フレミングの生涯と創作の原点

 

イアン・フレミングが書く「007」の原作小説は、シリーズを通して第二次世界大戦の影響を受けています。「タイムズ」紙のジャーナリストで歴史家であるベン・マッキンタイアーは、石炭や多くの食料品がまだ配給されていた時代に、ボンドは「英国の戦後の緊縮財政、配給制度、失われた力の迫り来る予感に対する理想的な解毒剤」であったと考察しています。

イアン・フレミングは登場人物に善悪の象徴として戦争をしばしば使用している。「読後感償却すべし」では、悪役のフォン・ハーシュタインは元ゲシュタポの将校であり、一方、ボンドの調査に協力してくれるカナダ国家騎馬警察のジョーンズ警視正はもと陸軍でモンゴメリー将軍の第8軍でアルデンヌ戦線の左翼だった。同様に、「007/ムーンレイカー」では、ヒューゴ・ドラックス卿(フーゴ・フォン・デル・ドラッヒェ伯爵)は「英国紳士を装った誇大妄想的なドイツ人ナチス」であり、彼の助手であるクレッブスはヒトラーの最後の参謀長と同じ名前となっている。第二次世界大戦後のドイツ人は、悪評のための簡単で明白なターゲットとなった。

「007」シリーズが進むにつれ、再興ドイツの脅威は冷戦の懸念に取って代わられ、イアン・フレミングの小説はそれに応じて焦点が変わっていきました。

 

 

(2)時代背景:英米関係

第二次世界大戦後、帝国を維持しようとする英国政府と資本主義的な新世界秩序を求める米国の間に緊張関係が表面化したが、イアン・フレミングはこの点に直接焦点を当てず、代わりに原作小説のなかでは大戦前からの「英国の帝国支配と行動が正常であるかのような印象」を書き続けています。

作家でジャーナリストのクリストファー・ヒッチェンズは、「古典的なボンドの物語の中心的なパラドックスは、表面的には共産主義に対する英米の戦争に専念しているものの、アメリカとアメリカ人に対する軽蔑と憤りに満ちていることだ」と観察している。

「007/死ぬのは奴らだ」、「007/ゴールドフィンガー」、「007/ドクター・ノオ」の3つの作品では、アメリカの問題であることが判明したが解決しなければならないのはイギリスの秘密情報部員であるジェームズ・ボンドである。

歴史学者のジェレミー・ブラックは、「007/ドクター・ノオ」で脅威にさらされているのはアメリカの資産であるにもかかわらず、イギリスの秘密情報部員とイギリスの軍艦であるHMSナーヴィク艦が、問題を解決するために小説の最後にイギリスの兵士とともに島に派遣されていることを指摘している。

「007は二度死ぬ」のタイガー田中の発言に対するボンドの反応は、英米関係の悪化を反映したものであり、それ以前の作品におけるボンドとライターの温かい協力的な関係とは対照的である。

 

 

(3)時代背景:ケンブリッジ・ファイブ

歴史学者のジェレミー・ブラックは、秘密情報部MI6の4人のメンバーがソ連に亡命した事件(ケンブリッジ・ファイブ)が、アメリカの諜報界でイギリス秘密情報部MI6に対して大きな悪影響を与えたと指摘している。最後の亡命は1963年1月のキム・フィルビーの亡命であり、フレミングは「007は二度死ぬ」の初稿を書いている最中であった。

イアン・フレミングが「007/カジノ・ロワイヤル」を執筆する少し前に2人の離反者が発生しており、伝記作家でジャーナリストのアンドリュー・マイケル・ダンカン・ライセットによれば、「007/カジノ・ロワイヤル」は「マクリーンとバージェスのような裏切り者を生み出しかねない戦後の世界の不穏な道徳的曖昧さを反映させようとした」ものと見ることができると語っている。

MEMO

ケンブリッジ・ファイブ(Cambridge Five)

 

ケンブリッジ・ファイブとは、第二次世界大戦中からソ連に情報を流していたイギリスのスパイ組織。1930年代から少なくとも1950年代初頭まで活動していたが、スパイ容疑で起訴されたメンバーはいなかった。

 

1951年にドナルド・マクリーン(暗号名:ホーマー)とガイ・バージェス(暗号名:ヒックス)が突然ソ連に渡ったことで、一般の人々が初めてこの陰謀を知ることになった。すぐにハロルド・”キム”・フィルビー(暗号名:ソニー、スタンレー)に疑いの目が向けられ、最終的には1963年に国外に逃亡した。フィルビーの逃亡後、英国秘密情報部はアンソニー・ブラント(暗号名:トニー、ジョンソン)、ジョン・ケアンクロス(暗号名:リスト)の2人から自白を得た。ブラントは1979年まで、ケインクロスは1990年まで、彼らの関与は何年も秘密にされていた。「ケンブリッジ・フォー」という呼称は、ケアンクロスが加わったことで「ケンブリッジ・ファイブ」に発展した。

 

「ケンブリッジ」という言葉は、1930年代にケンブリッジ大学で教育を受けている間にグループが採用されたことを意味している。ソ連の諜報機関が彼らを採用した正確な時期については議論がある。ブラントは、彼らがエージェントとして採用されたのは卒業してからだと主張している。トリニティ・カレッジのフェローであるブラントは、バージェス、マクリーン、フィルビーよりも数歳年上で、才能を見抜き、リクルートする役割を果たしていた。

 

5人とも、ソビエト共産主義のマルクス・レーニン主義が最良の政治体制であり、特にファシズムの台頭に対する最良の防御策であると確信していた。全員が英国政府の各部門で成功を収めたエリートであった。彼らは大量の極秘情報をソ連に渡しており、KGBが少なくともその一部は偽物ではないかと疑うほどであった。彼らが渡した極秘情報と同様に重要だったのは、彼らの正体がなかなか明かされないことで英国の支配階級の士気が下がり、米国は英国の安全保障に対して強い不信感を抱くようになる。

 

彼らのリクルートは諜報史上、外国諜報機関による最も成功した例と言われており、ソ連では「大物5人組」と呼ばれている。キム・フィルビーが計画するソ連の諜報活動に対する作戦はことごとく失敗するが、組織の内部抗争に勝ち出世していく彼の流した極秘情報によって西側諸国の諜報部員が数多く殺害された。

 

ブラックは、Mとボンドの会話によってフレミングが離反者と1963年のプロヒューモ事件を背景に英国の衰退を論じることができると主張している。

MEMO

プロヒューモ事件(Profumo affair)

 

1963年6月,イギリスの ハロルド・マクミラン保守党内閣の陸軍国務長官であったジョン・プロヒューモの起こした19歳の高級コールガール、クリスティン・キーラーとの20世紀最大の英国政治における一大スキャンダル。

 

この高級コールガールのキーラーがソ連のスパイ(在英ソ連大使館の海軍武官イワノフ大尉)と通じていたことが明らかとなり,内閣を揺るがす事件に発展,キーラーに国家機密を漏らしたとされるプロヒューモは6月辞任した。

 

また,このスキャンダルによって国民の不評を買ったマクミラン首相が体調不良を理由に首相を10月に辞任。同じ保守党の アレクサンダー・フレデリック・ダグラス=ヒューム内閣が成立した。しかし、1964年の総選挙で保守党政権が労働党に大敗する要因となった。

 

ソ連情報部が英国政府を混乱させる目的で仕掛けたハニートラップのうちで成功した例とも言われる。

 

 

「007」シリーズ最後の長編、1965年の「黄金の銃を持つ男」の中で、ブラックはジャマイカの司法機関によって独立した調査が行われたことを記しており、一方でCIAとMI6は「ジャマイカのCIDの最も緊密な連絡と指示の下で」行動していたと記されています。

これが非植民地で独立したジャマイカの新世界であり、大英帝国の衰退をさらに強調するものであった。

英国の衰退は、ボンドがいくつかの小説でアメリカの装備や人員を使用していることにも反映されています。

フレミングは「007/サンダーボール作戦」でロシアの組織「スメルシュ」を国際犯罪組織の「スペクター」に置き換え、「イデオロギーに制約されない悪」を登場させている。

ブラックは、国際犯罪組織「スペクター」がシリーズの残りの物語に登場することによって物語の連続性を保っていると語っています。

 

 

(4)時代背景:イギリスの衰退

「007」シリーズの原作小説は作品が進むにつれ、現実での大英帝国は衰退していった。

この大英帝国衰退のテーマは、シリーズ後期の作品の一つである1964年の「007は二度死ぬ」で、ボンドと日本の秘密情報機関のトップであるタイガー田中との会話第8章「花もて殺せ」の中で(ボンドを奮起させるために)最も強く表現されています。

 

 

ジェームズ・ボンドの仲間

「007」シリーズの中では定期的に、ボンドの任務に協力する男性の味方が登場し、仲間や友情の話題が出てきます。レイモンド・ベンソンは、ボンドが持つ味方との関係は「ボンドのキャラクターに別の側面を加え、最終的には小説のテーマの連続性を高めている」と考えています。ベンソンは、「ボンドが友人に対して感じる忠誠心は、仕事への献身と同じくらい強い」と見ています。「007/死ぬのは奴らだ」や「007/ドクター・ノオ」に登場するケイマン島出身のボンドの助手クォーレルは「欠くことのできない同盟者」である。

 

 

「007」シリーズのテーマ:善対悪

レイモンド・ベンソンは、「007」シリーズの最も明白なテーマは「善対悪」であると考えています。これは「007/ゴールドフィンガー」において、聖人ジョージのモチーフに代えて、作品の中で明確に述べられています。

「ボンドはうんざりしてため息をついた。もう一度戦おう!こんどこそ、セント・ジョージと竜との戦いだ」

(第18章「犯罪中の犯罪」)

ジェレミー・ブラックはセント・ジョージのイメージがイギリスではなく英国の擬人化であることを指摘している。

 

同じように”悪”を「竜」に例える表現は「007は二度死ぬ」や「007/わたしを愛したスパイ」にも登場します。ボンドは暗号解読機「マジック44」との交換条件に出された事件の調査を依頼されてタイガー田中に言われます。

「その死の城へ乗り込んで、城に巣食う竜を殺すこと」

(「007は二度死ぬ」:第8章「花もて殺せ」)

 

「この男はどこからともなく現れて、わたしを悪い竜の危険から救ってくれたおとぎ話の王子様みたいなものなのだ」

(「007/わたしを愛したスパイ」:第14章「ビンボー」)

 

 

 

フレミング以降のジェームズ・ボンドの小説

1968年~1979年

1964年8月のイアン・フレミングの死後、ジェームズ・ボンド小説の出版社であり、その後イアン・フレミング・パブリケーションズに改称されたグリドローズ・プロダクションは、作家のジェームズ・リーザーにジェームズ・ボンドの物語の続きの小説を書くように依頼しましたが断られました。

その後、グリドローズはキングズリイ・エイミスに依頼し、エイミスは「ロバート・マーカム」のペンネームで「007/孫大佐」(ハヤカワ・ミステリ文庫)を執筆し、1968年3月28日に出版されました。

 

1973年、グリドローズ・プロダクションはジョン・ピアソンによるボンドの架空の伝記「James Bond: The Authorized Biography of 007」の出版を許可しました。この本はジェームズ・ボンドの一人称で書かれており、ボンドはイアン・フレミングが一連の冒険物語を書いた実在の人物であると仮定しています。この作品は、ボンドの作品の中で、著者がグリドローズ・プロダクションと著作権を共有している唯一の作品です。

 

1977年、イオン・プロダクションの映画『007/私を愛したスパイ』が公開されましたが、この映画と同名の原作小説との間に大きな違いがあったため、イオン・プロダクションはノベライズ小説「新・私を愛したスパイ」(ハヤカワ・ミステリ文庫)を出版しました。1979年に公開された映画『007/ムーンレイカー』は、悪役の名前以外は原作小説と大幅に異なっていたので、ノベライズ小説「007とムーンレイカー」(創元推理文庫)が出版されました。どちらの作品も脚本家のクリストファー・ウッドが執筆しました。

 

 

ジョン・ガードナー(1981-1996)

作家のジョン・ガードナーは、著作権者であるイアン・フレミング・パブリケーションズから「007」シリーズの継続を依頼され、1981年から1996年にかけて、14本の小説と2つのノベライズを執筆しました。

1.「Licence Renewed」(1981)

「メルトダウン作戦」(文春文庫)

 

2.「For Special Services」(1982)

「スペクターの逆襲」(文春文庫)

 

3.「Icebreaker」(1983)

「アイスブレーカー」(文春文庫)

 

4.「Role of Honour」(1984)

「独立戦争ゲーム」(文春文庫)

 

5.「Nobody Lives For Ever」(1986)

「不死身な奴はいない」(文春文庫)

 

6.「No Deals, Mr.Bond」(1987)

「覚悟はいいかね、ボンド君」(文春文庫)

 

7.「Scorpius」(1988)

「スコーピアスの謎」(文春文庫)

 

8.「Win, Lose or Die」(1989)

「ミソサザイ作戦、準備完了」(文春文庫)

 

9.「Licence to Kill」(1989)

「007/消されたライセンス」(文春文庫)*

 

10.「Brokenclaw」(1990)

「紳士らしく死ね」(文春文庫)

 

11.「The Man from Barbarossa」(1991)

 

12.「Death Is Forever」(1992)

 

13.「Never Send Flowers」(1993)

 

14.「SeaFire」(1994)

 

15.「GoldenEye」(1995)

「007/ゴールデンアイ」(文春文庫)*

 

16.「Cold」(1996)

*はノベライズ作品。

 

 

レイモンド・ベンソン(1996-2002)

ガードナーが健康上の理由で引退した後、作家のレイモンド・ベンソンが物語を継続し、1996年から2002年の間にボンド小説6作、ノベライズ3作、短編小説3作を執筆しました。

長編

1.「Zero Minus Ten」(1997)

「007/ゼロ・マイナス・テン」(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

2.「Tomorrow Never Dies」(1997)

「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」(角川文庫)*

 

3.「The Facts of Death」(1998)

「007/ファクト・オブ・デス」(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

4.「High Time to Kill」(1999)

「007/ハイタイム・トゥ・キル」(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

5.「The World Is Not Enough」(1999)

「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」(角川文庫)*

 

6.「Doubleshot」(2000)

 

7.「Never Dream of Dying」(2001)

 

8.「The Man with the Red Tattoo」(2002)

「007/赤い刺青の男」(早川書房)

 

9.「Die Another Day」(2002)

「007/ダイ・アナザー・デイ」(竹書房文庫)*

 

*はノベライズ作品。

 

短編

「Blast from the Past」(1997)

「A Midsummer Night’s Doom」(1999)

「Live at Five」(1999)

 

 

その後、セバスチャン・フォークスにボンド小説の執筆を依頼し、イアン・フレミングの生誕100周年にあたる2008年5月28日(「007/猿の手を持つ悪魔」(竹書房))に発売されるまで、6年間の中断がありました。

その後、2011年には作家のジェフリー・ディーヴァーによる小説「007/白紙委任状」(文春文庫)、2013年にはウィリアム・ボイドによる小説「Solo」が発売されました。

2015年9月には、アンソニー・ホロヴィッツによる第1作目となる「007/逆襲のトリガー」(角川文庫)が出版され、2018年5月にはホロヴィッツの第2作目の小説「Forever and a Day」が出版されました。ホロヴィッツの第3作目「With a Mind to Kill」は2022年5月26日に発売される予定です。

 

また、フレミング財団公認の2つのスピンオフ・シリーズがあります。ボンドがイートン校の生徒だった頃の冒険を描いた『Young Bond』シリーズと、Mの秘書ミス・マネーペニーが密かに綴っていた日記を死後、姪が公開するという設定で書かれた物語の『The Moneypenny Diaries』シリーズです。

 

Young Bond』シリーズ

チャーリー・ヒグソン

1.「SilverFin」(2005年)

2.「Blood Fever」(2006年)

3.「Double or Die」(2007年)

4.「Hurricane Gold」(2007年)

5.「By Royal Command」(2008年)

短編小説「A Hard Man to Kill」(2009年)

 

スティーブ・コール

1.「Shoot to Kill」(2014年)

2.「Heads You Die」(2016年)

3.「Strike Lightning」(2016年)

4.「Red Nemesis」(2017年)

 

 

The Moneypenny Diaries』シリーズ

ケイト・ウェストブルック(サマンサ・ワインバーグのペンネーム)著

1.「The Moneypenny Diaries: Guardian Angel」(2005年)

2.「The Moneypenny Diaries:Secret Servant」(2006年)

3.「 The Moneypenny Diaries: Final Fling」(2008年)

短編小説「For Your Eyes Only, James」(2006年)

短編小説「Moneypenny’s First Date With Bond」(2006年)

 

 

 

キム・シャーウッド(2022-)

2021年11月、イギリスの女性作家キム・シャーウッドがイアン・フレミング財団と3作品の契約を交わしました。3部作の第1作目「Double or Nothing」は、2022年9月の出版予定です。Double or Nothingの意味は「一か八ばちかの勝負」

 

 

1.「Double or Nothing」(2022年9月)

 

 

 

記事作成日:2022/01/18

最終更新日:2022/04/22

 

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