「007」映画シリーズの第10作の節目となる作品『007/私を愛したスパイ』のあらすじとキャストなどを徹底解説!
映画『007/私を愛したスパイ』の解説・見どころ
「007」映画シリーズ15周年と10作目というメモリアル作品。イアン・フレミングの小説「007」シリーズ長編第9作(ストーリーは、原作の内容とは別の映画オリジナルのストーリー)。ロジャー・ムーア版ボンドの3作目の作品で、ムーア・ボンドのイメージを決定づけたシリーズ最大のヒット作品となりました。
海に潜れる万能のボンドカー、ロータス・エスプリや敵の巨大海底基地など、前2作の倍の1400万ドルの製作費を投じスケール感と娯楽性をアップ。怪力と鋼鉄の歯を持つ大男の殺し屋ジョーズも人気を博しました。オープニングのスキーアクションからの大ジャンプは話題となる。
アカデミー賞では、3部門(美術賞、作曲賞、歌曲賞)にノミネートされました。この時点でのシリーズ集大成的な意味合いも強く、とにかく派手な作品となる。
映画『007/私を愛したスパイ』のあらすじ
映画『007/私を愛したスパイ』予告編
映画『007/私を愛したスパイ』のあらすじ
16もの核弾頭を搭載したイギリス原子力潜水艦「レンジャー」とソ連原子力潜水艦「ポチョムキン」がそれぞれ突如消息を絶った。
その頃、モスクワでは。KGBの女性秘密情報部員、トリプルXことアニヤ・アマソヴァ(バーバラ・バック)KGB少佐は、恋人との休暇を楽しんでいた。そして、恋人が次の任務で向かう場所はオーストリアのアルプスであった。
オーストリアのアルプス。アルプスの山小屋では秘密情報部員のジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)が美女との休暇を楽しもうとしたその時、上司M(バーナード・リー)から連絡があり、急遽、本部に向かう。山小屋を後にしたボンドを突如、数名の謎の男らが攻撃を仕掛けてくる。ボンドは敵を倒しながら、崖からの大ジャンプで敵の攻撃をかわし逃げ切ることに成功する。そして、殺された男はアニヤ・アマソヴァ少佐の恋人であった。
アニヤ・アマソヴァ(バーバラ・バック)KGB少佐は、突如消息を絶ったソ連原子力潜水艦「ポチョムキン」の調査を命じられる。また、ゴーゴル将軍(ウォルター・ゴテル)から恋人が任務中に死亡したことを知らされる。
英国原子力潜水艦「レンジャー」が突如消息をを絶ったのは、何者かが戦略用に潜水艦航跡追跡システムを開発したためと推測した英国海軍は、潜水艦航跡追跡システムのマイクロフィルムを回収するためにジェームズ・ボンドにエジプト・カイロへ向かうよう命じた。
マイクロフィルムを求めてボンドは、カイロで同じ目的からソ連が派遣したKGBの女性秘密情報部員、トリプルXことアニヤ・アマソヴァKGB少佐と出会う。二人は現地の情報源のアジズ・フェケッシュに接触するが、謎の大男の殺し屋から襲撃を受け、情報を聞き出す前に殺されてしまう。
マイクロフィルムを持っているマックス・カルバと出会う時間と場所(マジャバクラブ)をアジズ・フェケッシュの手帳から知ったボンドは、マジャバクラブへと向かう。マジャバクラブでマックス・カルバと出会うが、大男の殺し屋にマックス・カルバは殺され、マイクロフィルムを持ち去られてしまう。
大男の殺し屋が偽装してきた電話の修理屋のライトバンに隠れて殺し屋の後を追うボンドとアマソヴァ。ボンドはアマソヴァと協力して殺し屋からマイクロフィルムを奪い返し、ふたりでなんとか逃げ切るのであった。
ボンド「助けてくれて、ありがとう」
アマソヴァ「女は自分のことしか考えないものよ」
一方、地中海のサルディーニャ島の沖合の海底に秘密の本拠地アトランティスをもつ謎の海運王カール・ストロンバーグ(クルト・ユルゲンス)は、ストロンバーグがある目的のために有名な博士と大学教授に開発させた潜水艦航跡追跡システムのマイクロフィルムを内部の裏切り者によって外部のものに売られてしまう。そのマイクロフィルムを回収するために大男の殺し屋ジョーズ(リチャード・キール)をカイロに差し向けていた。
二人は殺し屋ジョーズからマイクロフィルムを手に入れたが、そのマイクロフィルムは偽物だと判明する。だが、Q(デズモンド・ルウェリン)の解析からそのマイクロフィルムに写っていた海運王カール・ストロンバーグを識別する証拠を見つけ出す。上司Mとゴーゴル将軍は、英ソの利害が一致したことから、ボンドとアマソヴァは共同でストロンバーグを調査するように命じるのであった。
サルディーニャ島に向かう列車のなかでボンドとアマソヴァは再び、殺し屋ジョーズに襲われるが、ボンドは彼を列車から撃退する。
サルディーニャ島のホテルで、アマソヴァは3週間前にボンドがオーストリアのアルプスにいた事を知る。そして、彼女の恋人を殺した犯人はボンドであった。
ボンド「我々の仕事に死はつきものだろう」
アマソヴァ「この任務が終わったら、あなたを殺す」
二人はストロンバーグの秘書のナオミ(キャロライン・マンロー)と出会い、ストロンバーグが待つアトランティスに向かう。そこでボンドら二人はストロンバーグに海洋生物学者であると紹介される。
ストロンバーグ「人はなぜ、宇宙などへ行く。地球の7割を占める海はまさに未知の世界だ」
隠れ部屋にいた殺し屋ジョーズがストロンバーグに二人はエジプトで遭遇したスパイであると報告するとストロンバーグは二人を殺すようにジョーズに命じる。アトランティスからの帰路、二人は殺し屋ジョーズの攻撃を受ける。また、空からはストロンバーグの秘書のナオミが操縦するヘリコプターからも攻撃を受ける。ボンドが運転するロータス・エスプリがサブマリンカーに変形し海中から発射したミサイルがナオミの操縦するヘリコプターに命中し逃げ切ることに成功する。
Mの調査でストロンバーグが所有する巨大タンカー・リパラス号は完成してから9カ月間どこにも寄港していないことが判明する。
ボンドら二人は、ストロンバーグが所有する巨大タンカー・リパラス号を見つけ出し詳しく調べることにする。二人はアメリカ海軍の潜水艦USSウェインに乗り込みリパラス号を監視していると、怪信号による攻撃を受けて潜水艦の全機能が失われてしまう。潜水艦USSウェインが急浮上したこところをリパラス号の船首が開き船内の潜水艦ドッグに飲み込まれてしまう。リパラス号の内部には、行方不明となった英ソの原子力潜水艦が係留され、乗組員たちは牢に監禁されていた。
ボンドとアマソヴァを前にして、大富豪である海運王カール・ストロンバーグは強奪した英ソの潜水艦に搭載された核弾頭を使って米ソを核攻撃し核戦争を引き起こし、世界を壊滅させ海底に自身の夢である水中王国を作ろうと計画していると二人に語るのであった。
ストロンバーグは、アマソヴァを連れて本拠地であるアトランティスに帰っていった。
ボンドは、監禁されそうになるが脱出し、監禁されていた英ソ連の原子力潜水艦の乗組員たちを解放。
リパラス号の乗組員たちと激しい戦闘になるが、リパラス号の乗組員たちを倒す。米ソに向けられていた核弾頭の座標をそれぞれの原子力潜水艦の座標に設定し直す命令をそれぞれの原子力潜水艦に出し、お互いの核弾頭で互いを攻撃して破壊することに成功する。
だが、ボンドらは、5分以内にストロンバーグの本拠地であるアトランティスを破壊するように命じられる。ボンドは、Qから届いたジェットスキーでアマソヴァを救出するためにアトランティスに向った。
ボンドは、巨大なダイニングルームでストロンバーグと対決し彼を倒す。ボンドは、アマソヴァを探していて殺し屋ジョーズに出くわす。ボンドは、産業用磁石クレーンを利用してジョーズの金属の歯をつかみ、鮫のいる水槽に彼を落として鮫の餌にして彼を倒したと思ったが・・・。
ボンドは、総攻撃が始まるなかでアマソヴァを見つけ出し、脱出用ポッドに乗り込む。任務が終わり、脱出用ポッドのなかにあったドン・ペリニヨンの栓を開けようとしたボンドにアマソヴァは拳銃を向けるのであった。
ボンド「僕の国では、処刑の前にひとつ希望が叶えられる」
アマソヴァ「いいわよ」
ボンド「濡れた服を脱がないか」
ボンドとアマソヴァは口づけをかわしながら沈みゆくアトランティスをあとにするのであった。
映画『007/私を愛したスパイ』作品情報(スタッフ・キャスト)
原題:The Spy Who Loved Me
製作年:1977年
製作国:イギリス/アメリカ合衆国
製作会社:
イオン・プロダクション
配給:ユナイテッド・アーティスツ
日本公開日:1977年12月24日(土)
上映時間:125分
【 スタッフ 】
製作:アルバート・R・ブロッコリ
【ボンド映画製作10作目】
「007」シリーズを成功に導いたプロデューサー、アルバート・”カビー”・ブロッコリの生涯監督:ルイス・ギルバート
原作:イアン・フレミング「007/わたしを愛したスパイ」
脚本:リチャード・メイボーム クリストファー・ウッド
音楽:マーヴィン・ハムリッシュ
テーマ曲:モンティ・ノーマン「ジェームズ・ボンドのテーマ」
主題歌:カーリー・サイモン「私を愛したスパイ(Nobody Does It Better)」
撮影:クロード・ルノワール
編集:ジョン・グレン
プロダクション・デザイン:ケン・アダムス
特殊効果:ジョン・エヴァンス
特殊視覚効果:デレク・メディングス
メインタイトル・デザイン:モーリス・ビンダー
【 キャスト 】
ロジャー・ムーア:ジェームズ・ボンド
任務遂行中の殺人が認められているイギリス政府公認の殺人許可書”殺しのライセンス”を持つイギリス情報局秘密情報部(MI6)00課に所属するエージェント。コードネームは”007”。普段は、MI6のダミー会社であるユニバーサル貿易の社員。
【3代目ジェームズ・ボンド】ロジャー・ムーアのプロフィールやキャリアは?
バーバラ・バック:アニヤ・アマソヴァ
シベリアで訓練を受けたエリートKGB秘密情報部員(トリプルX)。ハイジャックされた2隻の原子力潜水艦の行方を探すために不本意ながら、ジェームズ・ボンドと組む。恋人をボンドに殺されたために「この任務が終わったら、あなたを殺す」とボンドに言い放つ。
クルト・ユルゲンス:カール・ストロンバーグ
本作の悪役。世俗を嫌った海運王。海を愛しすぎたばかりに地上の人間を皆殺し、海底に自身の楽園を創造することを夢見る。
リチャード・キール:ジョーズ
鋼鉄の歯を持ち、2メートルの大男。海運王ストロンバーグの用心棒で殺し屋だが、どこか愛嬌があって憎めない人物。
キャロライン・マンロー:ナオミ
ストロンバーグの秘書。
ウォルター・ゴテル:アナトール・ゴーゴル将軍
KGB長官。
シェーン・リマー:カーター艦長(米海軍)
シドニー・タフラー:リパラス号艦長
バーナード・リー:M
イギリス情報局秘密情報部(MI6)の局長。
デズモンド・ルウェリン:Q
イギリス情報局秘密情報部特務装備開発課(Q課)の責任者。QはQuartermaster(需品担当将校)の略称。彼の発明品をすぐに壊すボンドに少し呆れている。
ロイス・マクスウェル:ミス・マネーペニー
イギリス情報局秘密情報部(MI6)の局長Mの秘書。
映画『007/私を愛したスパイ』トリビア
◎撮影監督のクロード・ルノワールの撮影では、巨大なタンカーセットの最後まで見渡すことが出来ませんでした。彼は照明を監視・指揮することが出来なかった。そこでプロダクション・デザインのケン・アダムは、友人の映画監督スタンリー・キューブリックに相談しました。スタンリー・キューブリックは、自分の名前を出さないことを条件に、照明の監督をしました。彼は投光照明の使用を提案しました。さらに、カタリーナ・キューブリック(キューブリックの継娘)は、リチャード・キール(殺し屋ジョーズ)がこの映画および『007/ムーンレイカー』(1979)で着用した義歯をデザインしました。
◎エンドクレジットには、「次回作『007/ユア・アイズ・オンリー』(1981)でお会いしましょう」と紹介されましたが、1977年は、ジョージ・ルーカス監督作品『スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望』(1977)やスティーブン・スピルバーグ監督作品『未知との遭遇』(1977)のSF映画の大成功により、SF映画の要素のある『007/ムーンレイカー』(1979)が次回作に選ばれました。
◎この映画が製作されたとき、ジェームズ・ボンドの映画シリーズは多くのメーカーが自社製品の紹介をするには最も効果的で、映画で使用されることを望んでいました。ボンドカーを供給する会社には激しい宣伝競争がありました。ロータスの広報担当マネージャーのドン・マクラフリンは、この切望された地位を勝ち取るための最善の方法は、プロデューサーに猛烈な売り込みをするのではなく、追跡させることであることに気づきました。ある日、彼はパインウッドスタジオに出向き、未発表のロータス・エスプリを運転していきました。彼はボンド映画が撮影されているセットの外に駐車し、プロデューサーがランチをとるためにスタジオの外に出てきたときに車を見ると知っていました。車に人ごみが出来ると、車が何であるかを知りたがっているプロデューサーの質問に答える事なくマクラフリンはさりげなく車に乗り込み、立ち去りました。彼が期待していたように、プロデューサーは車が何であるかを調べるために必死でした、そしてプロデューサーのアルバート・R・ブロッコリはこの映画のためにボンドカーにはロータス・エスプリを選びました。
◎この『007/私を愛したスパイ』の公開後、白いロータス・エスプリの需要は急増し、新規顧客は3年間の待機リストに入れられなければならなくなりました。
◎元の脚本では、ボンドが巨大タンカー・リパラス号に搭載された産業用磁石クレーンを使用して殺し屋ジョーズをタンカーの炉に落として、ジョーズは死ぬと書かれていました。このシーンは、リチャード・キールとロジャー・ムーアをモデルとしてストーリーボード化され、リハーサルもされましたが、最終的には廃棄されました。プロデューサーのアルバート・R・ブロッコリはジョーズのキャラクターが非常に魅力的であると感じたため、ジョーズが生き残っている別のエンディングが撮影され、ジョーズが生還することを許可しました。この作品が上映されたとき、ジョーズがフィナーレで泳いでいるのを見て、観客は歓声を上げました。
◎リチャード・キールが演じたジョーズの金属製の歯は、ワシントンD.C.のスパイ博物館に展示されています。
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記事作成日:2020/06/27
最終更新日:2022/04/27