「007」映画シリーズ第14作『007/美しき獲物たち』のあらすじとキャストなどを徹底解説!
映画『007/美しき獲物たち』の解説・見どころ
「007」映画シリーズ第14作目で、ロジャー・ムーアがジェームズ・ボンドを演じた最後の作品。イアン・フレミングの短編集「007/薔薇と拳銃」収録の短編「薔薇と拳銃(原題:From a View to a Kill)」からタイトルのみ借用。物語は第3作『007/ゴールドフィンガー』のストーリーを現代風にアレンジしたもの。
ロジャー・ムーアボンドの集大成として製作され、ムーアお得意のユーモアセンスにあふれ、アクション・シーンを大幅に取り入れた作品になっている。スキー&壊れたスノーモービルの板、エッフェル塔から逃走するメイ・デイを追ってのカーチェイス、騎馬上での格闘、燃えさかる市役所のエレベーターからの脱出、消防車での逃走、飛行船を追っての空中スタント、ゴールデン・ゲート・ブリッジでの格闘など数多くのアクション・シーンが見どころになっている。
映画『007/美しき獲物たち』のあらすじ
映画『007/美しき獲物たち』予告編
映画『007/美しき獲物たち』のあらすじ
ソ連国内からアメリカ製のマイクロチップを持ち出した英国秘密情報部員の003はシベリアの雪原で遭難。遺体からマイクロチップを回収した英国秘密情報部員ジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)は、ソ連軍の追跡をスキーや壊れたスノーモービルの板を使って、英国海軍の潜水艇に無事帰還し逃走に成功する。
1週間後、ボンドはM(ロバート・ブラウン)とグレイ国防大臣(ジェフリー・キーン)から呼び出される。英国が開発した防衛システムに不可欠のマイクロチップが奪われる事件が起きる。どうやらKGBが関与しているらしいというのだ。003の遺体から発見されたチップは、一般的なチップと異なり核爆発で発生する強力な電磁パルスにも耐えうるものであった。製造元のゾリン社が怪しいとにらんだ英国秘密情報部は、ボンドにゾリン社の調査を命じる。この事件にゾリン社の創設者兼CEOのマックス・ゾリンが関わっているという情報を得たボンドは、ゾリンに接触を試みる。ゾリンは石油とガスで財産を築き上げ、それを基にしてエレクトロニクスと高度技術で事業を拡大し、さらに競馬で大儲けをした実業家で、一方反共主義者として知られていた。
ボンドは、ロイヤル・アスコット競馬場でゾリンの持ち馬ペガサスが次々と勝利するのを目にする。ところが持ち馬ペガサスが突然発作を起こして暴れだしてしまう。それを止めたのがメイ・デイ(グレース・ジョーンズ)という謎の女性だった。ホーストレーナーのゴッドフリー・ティベット卿(パトリック・マクニー)は、レース前の検査では陽性の反応が出ないがゾリンの馬には薬物が使われていると疑っていた。フランスの競馬クラブが、ゾリンの持ち馬ペガサスの勝ち方に疑問を持ち私立探偵オーベルジーンを雇って調査に乗り出す。
ボンドはティベット卿の紹介でフランスのエッフェル塔のレストランで私立探偵のオーベルジーン(ジャン・ルージュリー)と出会う。オーベルジーンはゾリンが毎年恒例の種馬オークションを行っているという情報を得る。ボンドはオーベルジーンから種馬オークションの情報を聞き出していると彼は謎の女性メイ・デイによって暗殺されてしまう。
ボンドは、メイ・デイの後を追跡するが彼女はエッフェル塔の上から飛び降りてパラシュートを使って逃走してしまう。
ボンドとティベット卿は、ゾリン主催の種馬オークションに潜入することに成功する。そこで二人はゾリンの警備主任スカルピン(パトリック・ボーショー)や獣医師のカール・モートナー博士(ウィロビー・グレイ)などと出会う。ボンドは、ゾリンが所有する豪華な城での種馬オークションのパーティー中にアメリカ人女性のステイシー・サットン(タニア・ロバーツ)がヘリコプターで城に到着するのを見かける。ボンドは、事務所でゾリンが彼女に500万ドルの小切手を渡すところを目撃する。
その夜、ボンドとティベット卿は厩舎の下に秘密の実験室があり獣医師のカール・モートナー博士の秘密の仕事を知る。ゾリンは競走馬の脚にマイクロチップを埋め込み、騎手の鞭の先端に隠された無線送信機の指示でステロイドを放出するようにプログラミングされていたのである。また、ボンドはソ連国内から持ち帰ったものと同じマイクロチップが大量に収められ、出荷の準備をしている倉庫も見つける。ボンドは、厩舎の下の実験室を調べているのがバレて急いで部屋に戻ろうとするが間に合わずメイ・デイの部屋のベッドに隠れてメイ・デイと一夜をともにすることになる。
翌朝、ゾリンは隠しカメラとデーターベースからボンドがイギリスの秘密情報部員であることを突き止める。洗車に出かけたティベット卿はメイ・デイによって殺害されてしまう。ゾリンはボンドを城の近くにある池に車の事故でティベット卿とともに溺死と見せかけて殺害しようとするがボンドは池のなかに潜っていく車から脱出することに成功する。
一方、ソ連のゴーゴル将軍(ウォルター・ゴテル)はゾリンが自分の許可なく新しい事業を拡大していることを危惧してKGBから抜け出すことはできないと忠告するが、ゾリンはゴーゴル将軍の話を聞こうとしなかった。ゾリンは、シリコンバレーを壊滅させることでマイクロチップ業界の独占を目論んでいた。
さらにボンドは、サンフランシスコでCIAのチャック・リー(デヴィッド・イップ)から獣医師のカール・モートナー博士が元ナチス・ドイツのハンス・グラウブという名の科学者で第二次世界大戦中に強制収容所で妊娠中の女性にステロイドを使用して知能向上実験をしていたことを突き止める。ゾリンと殺し屋メイ・デイは、カール・モートナー博士が行ったステロイド実験による異常発達児であることを知る。
ボンドは、チャック・リーからゾリンの採油基地が怪しいと聞き、その夜基地に潜入を試みる。同じようにゾリンの採油基地に潜入しようとしていた人物がいた。その人物は、基地でのゾリンたちの会話を録音することに成功していた。ボンドが採油基地から逃げ帰ったところで出会った人物は、KGBのポーラ・イワノヴァ(フィオナ・フラートン)であった。ボンドは、彼女からこっそり録音テープを盗み出し基地でのゾリンたちの会話を聞き「メインストライク作戦」という言葉を知る。
ボンドは、市役所の鉱山管理局のハウ局長(ダニエル・ベンゼリ)に話を聞きに行った際にステイシーを見かける。ボンドはステイシーの家にこっそり忍び込むが、ゾリンの手下の襲撃を受ける。手下を追い払った後、彼女の祖父が所有していた石油会社がゾリンに乗っ取られたことを知る。ステイシーは、ゾリンに対して訴訟を起こしていたが、種馬オークションのパーティーがあった日に口止め料としてゾリンから500万ドルの小切手を渡される。だが、ステイシーはゾリンと徹底的に闘うため小切手を破り捨てる。
その夜、ボンドとステイシーはゾリンの「メインストライク作戦」の話からシリコンバレーの地層に関しての資料を市役所から盗み出すために市役所へ向かう。そこでふたりはゾリンとメイ・デイに捕まり、市役所の火事に見せかけてふたりをエレベーター内に閉じ込めて殺害しようとするが逃げ出すことに成功する。警察に市長殺害の容疑をかけられたボンドは消防車で逃走する。
翌日、ボンドとステイシーはシリコンバレー近くのゾリンの廃坑に潜入することに成功。ゾリンはヘイワード断層とサンアンドレアス断層に沿って大爆発を起こして、シリコンバレーを水没させようと計画していた。爆弾を廃坑の地下に設置して、2つの断層が同時に移動することを防ぐために設置された地質学的ロックをも破壊しようとしていた。
ゾリンとスカルピンは、側近以外の部下や鉱山労働者ら全員を射殺してしまう。裏切られたと知ったメイ・デイは、ボンドに協力してロックを爆破しようとしている大型爆弾の起爆装置を取り除くことを手伝う。メイ・デイは廃坑からその大型爆弾の起爆装置を手押し車に乗せて廃坑から運び出し、自らの命を犠牲にして起爆装置を爆破させる。
ゾリン、スカルピンやモートナー博士らは飛行船で逃げる去る途中でステイシーを人質として連れ去る。飛行船が上昇する間際にボンドは飛行船の前部係留ロープに捕まる。ゾリンは、ボンドをゴールデン・ゲート・ブリッジで殺害しよとするが、飛行船を橋のフレームワークに係留し移動を阻止する。ステイシーは飛行船から脱出し橋の上のボンドと合流する。ゾリンは斧を持ってステイシーの後を追う。ボンドとゾリンはゴールデン・ゲート・ブリッジの上で激しい戦闘を繰り広げるが、ボンドが優勢になりゾリンは橋から落下して死んでしまう。激怒したモートナー博士は、ダイナマイトでボンドを殺そうとするが、ボンドが急に係留ロープを切ったことでダイナマイトを飛行船の中で落としてしまい、数秒後にスカルピンとモートナー博士は飛行船の大爆発とともに死んでしまう。
ボンドはゾリンの陰謀を阻止したことでゴーゴル将軍から外国人としては初めてレーニン勲章を授与されるのであった。ゴーゴル将軍は自らボンドにレーニン勲章を手渡したいと申し出るが、
M「007は今どこだ?」
Q(デズモンド・ルウェリン)がスパイ・ロボットを使いステイシーの屋敷のなかを探索しているとボンドとステイシーを見つけるが、
Q「007は、只今事後処理中でして・・・」
ボンドとステイシーはシャワールームのなかで抱き合い口づけを交わすのであった。
映画『007/美しき獲物たち』作品情報(スタッフとキャスト)
原題:A View to a Kill
製作年:1985年
製作国:イギリス/アメリカ合衆国
製作会社:
イオン・プロダクション
ユナイテッド・アーティスツ
配給:MGM/UA UIP
日本公開日:1985年7月6日(土)
上映時間:131分
【 スタッフ 】
製作:
アルバート・R・ブロッコリ
【ボンド映画製作14作目】
「007」シリーズを成功に導いたプロデューサー、アルバート・”カビー”・ブロッコリの生涯マイケル・G・ウィルソン
監督:ジョン・グレン
原作:イアン・フレミング「薔薇と拳銃」
脚本:
リチャード・メイボーム
マイケル・G・ウィルソン
音楽:ジョン・バリー
テーマ曲:モンティ・ノーマン「ジェームズ・ボンドのテーマ」
主題歌:デュラン・デュラン「A View to a Kill」
撮影:アラン・ヒューム
編集:ピーター・デイヴィス
プロダクション・デザイン:ピーター・ラモント
特殊効果:ジョン・リチャードソン
メインタイトル・デザイン:モーリス・ビンダー
【 キャスト 】
ロジャー・ムーア:ジェームズ・ボンド
任務遂行中の殺人が認められているイギリス政府公認の殺人許可書”殺しのライセンス”を持つイギリス情報局秘密情報部(MI6)00課に所属するエージェント。コードネームは”007”。普段は、MI6のダミー会社であるユニバーサル貿易の社員。
【3代目ジェームズ・ボンド】ロジャー・ムーアのプロフィールやキャリアは?
タニア・ロバーツ:ステイシー・サットン
サットン石油の相続人。祖父の石油会社を不正に乗っ取ったゾリンに対して訴訟を起こす。地質学者。
クリストファー・ウォーケン:マックス・ゾリン
本作の悪役。ナチスの知能向上実験で誕生した異常発達児。ソ連にさらわれKGBのスパイとしてフランス産業界に潜入。その後、ロシアを裏切り自身の利益のために人工地震でシリコンバレー破壊を画策する黒き野望を抱く実業家。
グレース・ジョーンズ:メイ・デイ
マックス・ゾリンの愛人兼ボディガード。エッフェル塔の頂上からパラシュートでダイビングする大胆さと強靭な肉体でボンドを追い詰める。ボンドと一夜をともにするがゾリン一筋を貫いていた。だが、最後にゾリンに裏切られボンドの味方になる。
パトリック・ボーショー:スカルピン
マックス・ゾリンの側近。
ウィロビー・グレイ:カール・モートナー博士
マックス・ゾリンが所有する競走馬の獣医。実は第二次世界大戦中にナチス・ドイツの科学者でステロイドを使用した知能向上実験を行っていた。
アリソン・ドゥーディ:ジェニー・フレックス
マックス・ゾリンの部下。
パトリック・マクニー:ゴッドフリー・ティベット卿
ホーストレーナーだが、ボンドの使用人としてボンドとともにゾリンの競走馬ペガサスの調査をすることになる。
ジャン・ルージュリー:オーベルジーン
フランスの私立探偵。
ウォルター・ゴテル:アナトール・ゴーゴル将軍
ソ連のKGB長官。
フィオナ・フラートン:ポーラ・イワノヴァ
KGBのスパイ。
デヴィッド・イップ:チャック・リー
CIAのエージェント。
ダニエル・ベンザリ:W・G・ハウ
サンフランシスコの鉱山管理局局長。
ジェフリー・キーン:フレデリック・グレイ
国防大臣。
ロバート・ブラウン:M
イギリス情報局秘密情報部(MI6)の局長。
デズモンド・ルウェリン:Q
イギリス情報局秘密情報部特務装備開発課(Q課)の責任者。QはQuartermaster(需品担当将校)の略称。彼の発明品をすぐに壊すボンドに少し呆れている。
ロイス・マクスウェル:ミス・マネーペニー
イギリス情報局秘密情報部(MI6)の局長Mの秘書。
映画『007/美しき獲物たち』トリビア
◎ロジャー・ムーアは撮影中に57歳になり、ボンドを演じる最年長の俳優になりました。ショーン・コネリーは「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン(1983)」でボンドを演じた時は52歳でした。
◎ロジャー・ムーアは、タニア・ロバーツの母親が自分よりも若いことを知った時、ジェームズ・ボンドを演じることを終わりにしようと決意したと述べています。プロデューサーのアルバート・R・ブロッコリは、次作『007/リビング・デイライツ(The Living Daylights)』(1987)で若い俳優が欲しくて、ムーアをボンド役として引き止めることはしなかったと述べました。ブロッコリは、この映画のために57歳だったムーアを引き止めることは間違いだったと感じていました。一部の情報源の発言に反して、ムーアはこの映画の撮影終了後に次回作のボンド映画の出演依頼はありませんでした。
◎この『007/美しき獲物たち』が公開されたとき、ショーン・コネリーはマスコミに、「ボンドは35歳、33歳の若い俳優が演じるべきです。私は年を取りすぎています。ロジャーはもっと年を取りすぎています!」と答えた。
◎『007/美しき獲物たち』はミス・マネーペニー役としてのロイス・マクスウェルが出演する最後の作品でした。ロイス・マクスウェルは引退すると言ったので、昇進してMになれると思ったそうです。しかし、当時、プロデューサーのアルバート・R・ブロッコリは、ジェームズ・ボンドが女性から指令を受けることを観客は受け入れないと信じていました。ジュディ・デンチが『007/ゴールデンアイ(GoldenEye)』(1995)でMの役を引き受けたとき、Mは女性に変更となりました。
◎タイトル曲はジョン・バリーとデュラン・デュランによって書かれ、デュラン・デュランによって歌われました。これは、米国でナンバー1に到達した唯一のジェームズ・ボンドの曲であり、チャートでの17週間のうち2週間、トップの座に留まりました。1985年5月18日にイギリスとアメリカのチャートに入り、イギリスのチャートでは2位が最高位でした。イギリスで発売されたサウンドトラックアルバム は1985年6月22日にチャートイン。米国で発売されたサウンドトラックアルバムは、1985年6月29日にチャートに登場した後、38位が最高位でした。
◎クリストファー・ウォーケンは、ボンド映画に出演した最初のアカデミー賞を受賞した俳優となりました。
◎「A view to a kill」というタイトルは、原作であるイアン・フレミングの短編小説のタイトル「From a view to a kill」から取られたものですが、映画化にあたり語呂が悪いとの理由で”From”の単語が削られました。そのために意味をなさないタイトルになってしまいました(「from~to~」で「~から~まで」という意味の構文)。
原作者のイアン・フレミングは、この from a view to a kill というフレーズを伝統的なキツネ狩りの時に歌う狩猟歌の歌詞から引用してきました。
D’ye ken John Peel (song)
Alternative verse 1
Yes, I ken John Peel and his Ruby, too!
Ranter and Ringwood, Bellman so true!
From a find to a check, from a check to a view,
From a view to a kill in the morning.(意味は「獲物を見つけて、朝に仕留める」)
For the sound of his hor’, etc.
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記事作成日:2020/07/21
最終更新日:2022/04/27